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【たらさわみち・水樹和佳:萩尾望都談義】


少年少女SFマンガ競作大全集5
発売日:1980年04月01日
出版社:東京三世社

資料提供
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「少年少女SFマンガ競作大全集5」51-64ページ
たらさわみち・水樹和佳:萩尾望都談義
(画像に続いてテキスト抽出あり)













「少年少女SFマンガ競作大全集5」51-64ページ
たらさわみち・水樹和佳:萩尾望都談義

たらさわ 水樹さんと初めて会ったのは萩尾先生のところで、その頃はお互いまだデビュー前でしたよね。

水樹 当時私はまだマンガを描いてなかったの。萩尾先生の絵をトレスして、ふき出しの中をお便りにしてパロディーみたいにしたファンレターを出したんです。
それを見た先生が、これならアシスタントができるだろうと誤解なさったらしく、電話を下さったんです。まさかファンレターに返事を下さるだろうとか、ましてや直接電話を頂けるとは思ってなかったのであわてました。お花のおけいこに出かけていた時に家にかかってきたらしく、妹が“萩尾先 生から電話があったわよ”とけいこ先に連絡をくれて。もう一度一時間後位に先生が電話をくれるということだったので、飛ぶようにして自宅に帰りました。でも何を話したのか、よく覚えていないんです(笑)。

たらさわ 私は高校の時に萩尾先生の作品を読んで感動して、ファンレターに履歴書を入れて出したんです(笑)。そしたらとにかく会いにいらっしゃいというお言葉を頂けて……。
ま萩尾先生は竹宮恵子先生といっしょに住んでる頃で、何回か遊びに行きました。そのうち萩尾先生が引越しなさって、しばらくしてから又電話をもらえて、その時はもう高校を卒業してたんで今度はお手伝いができるぞと……。 でも行っても手伝わないで食事ばっかり作ってたんです(笑)。その時に水樹先生と会ったんですね。食事は一応お料理の本を見て、食べられるものを作ってました。

水樹 萩尾先生は何でもおいしが てくれましたよね。でもあんまり食事に興味がなかったようですね。食べても食べなくてもいいみたいなところがあって、おいしいものは喜んで食べるけど、なんにもなかったらそれでもいいやって感じ。

たらさわ あの頃はアシスタントとかいろんな人が来て、けっこう人数がいたのね。忙しい時はアシスタントの人がこたつのまわりにグルッと、三〜四人、もっといたかな。「ポーの一族」と「トーマの心臓」の頃だったかしら。
はじめて会いに行った時「メリーベルと銀のバラ」の原稿がちょうどあがった時で、すばらしい絵だったし生原稿をはじめて見て感激しましてね。それが本に載るまで一ヶ月位あったんですけど、自分の見た原稿がどういうふうに印刷されるのか、待ち遠しかったですね(笑)。

水樹 ベタ塗るのも嬉しくて(笑) でも何か先生の原稿をいじるのが怖くて、ちょっとしたミスも萩尾先生の原稿を汚したということで、アア、オンレオオイ! 単なるホワイトのミスでも、これはえらいことをしてしまったと大謝りに謝ると、萩尾先生が“これは何でもないのよ”と言ってくれて(笑)。でもその頃私はまだマンガをろくに描いてなかったから、そもそもホワイトを使うこと自体いけないことのような気がして(笑)。

たらさわ お互いにデビュー半年くらい前だったかしら。
萩尾先生は仕事は夜型とかそういうふうには決まってなくて、わりとバラバラだったんじゃないかな。けっこう寝る方でしたよね。

水樹 いつだったか、七時間じゃ寝たうちに入らないって全然寝なかったりしたこともありましたけど。

たらさわ 淡々としてる方で、黙々とやってるなあという印象がありますね。あまり冗談らしい冗談も言わないし。

水樹 淡々と冗談言うもんで通じなかったりして(笑)。淡々と言うので冗談だとこっちが気づかないわけ。でも本当はおもしろい方です。

たらさわ ほんとに不思議な人ですね。

水樹 わりと人見知りする方かしら。

たらさわ それととにかく記憶力がすごいんですよね、もうびっくりしちゃう。映画のワンシーンを 克明に覚えていたり……。


「あそび玉」を読んでガーン

水樹 “これは○○の映画の××の場面に出てきたイスよ”と、 すごいですね。たとえば私と先生が同じ映画を観て来て、“あの時の場面の洋服の色がステキだったわね”ということになって二人の記憶が違ってたら、先生の方が絶対正しい!
だからマンガでも、画風だけじゃなくストーリーもキチッと頭の中に入ってる。ただ淡々と話すもんで感動が薄れるってことはあるはね、萩尾先生の話だと(笑)。
とにかく落ち着いているというか動じないというか……。

たらさわ 萩尾先生の「あそび玉」を読んだ時はガーンとショックを 受けましたね。少女マンガでこんな世界があるのか!と思って、あの作品を読んでお手紙を書いたんです。

水樹 ストーリーももちろんすごいと思ったけど、絵とか構図も当時としては……。

たらさわ あの頃にしては本当になかった構図などが山ほど出てくるし、表紙からして女の子のアップばかりが多かった中で、男の子の動きが出てるでしょ、びっくりしましたね。
上から見たシーン、ななめから見たシーンなんかが出てきて…。真正面かとか真横から見たシーンっていうのは、わりと少女マンガでは多かったんですけど、ああいうシーンは……。

水樹 なかったのよね、当時は。

たらさわ それにあの短いページの中にピリッと効いた風刺みたい
たものも含まれてるし、やはりすごいなあと思いました。今読んでも全然古めかしい気がしませんよね。
私のデビュー作が、ちようど萩尾先生の「11人いる!」と掲載が同時だったから、とっても嬉しいような怖いような……。

水樹 私のデビューは75年だったかな。『りぼん』に載った16ページもので、SFじゃなくふつうの作品。
私は自分がマンガを描くようになるとは思ってなかったし、ましてSFマンガを描くとも思ってなかったのです(笑)。でもSFは子供の項から好きでした。最近のSF小説は全然読んでないけど(笑)。たまたま「樹魔」を描いて何だか火がついたようにSFマンガを描き始めて、やっぱり知らないうちに自分の中にSFのいろんなものが気がついたらけっこう入ってたのかなあ、なんて思うんだけど。でもSF小説を本当に読んでないもんで、描いていながら自分の作品が新しいのか古いのかさっぱりわからん(笑)。だから誰かに。“これは○○の作品に似ている”と言われても“私は一切読んでない、たまたま重なっているんだ”としか言い様がない(笑)。

たらさわ 私もSF小説に関しては本当に皆無に等しいってところです。ブラッドベリ三冊読んだかな。すごくSFに詳しい人いるでしょ、そういう人に作家の名前言われても全然わかんなかったりして(笑)。

水樹 萩尾先生はSF小説、たくさん読んでると思います。SFに限らず、いつも本持って歩いている。萩尾先生のSF作品は別格っていう印象があるもんで、自分のと比べる対象にはならない(笑)。
私がマンガを走って買いに行ったのは小学校の時の「リボンの騎士」と「ポーの一族」、それしかない! 一日早い発売の本屋さんを見つけて走って買いに行って、家に持って帰るまで待ちきれずに読みながら帰りました(笑)。

たらさわ 萩尾先生に作品を見てもらったりもしましたね。わりと淡々としながらもはっきり言ってくれました。

水樹 私の時はやさしかったな。あんまりヘタなので気の毒だったのかしら(笑)。何かこう本当にやさしくて、構成で変なとこなんか指摘してくれましたけど。絵はどうしようもないから黙ってたのかな(笑)。

たらさわ 自分の思うように好きなままに描いて一人よがりになっちゃうと、構成とか展開とかわかんなくなるんですよね。そういうところを萩尾先生は、はっきりと指摘してくれるんです。
話は変わりますけど、最近の少女マンガは新人の描く作品が小粒というか、わりと身近なお話が多くなりすぎちゃったような気がしますね。私たちがデビュー目指してた頃っていうのは、いろんな分野があったと思うんです。今は何かちまちまっとして、学園物が多かったり……。

水樹 描いてる人の世界が狭いなって気もしますね。昔はこう末広がりっていうか広がっていく印象の新人が多かったのが、今はすぼまっているみたいで。形として整っていなくても、もう少し迫力のある作品が読みたいなと思いますね。

たらさわ ヘタに完成されちゃった作品が多くて、絵にしても話にしても、荒削りでも魅力のあるのが欲しいような……。

水樹 萩尾先生も一時期、そういうことをさかんに言ってた頃がありました。でも最近はもう何だか淡々として我道を行く(笑)。あんまりオトメチックな作品ばかりで本が埋った時は、さすがに何のかんの言ってたりもしましたけど、もともとゴーイングマイウェイの人ですから……。

たらさわ まわりにはふりまわされませんね。

水樹 それにしてもSFってなかなか描かせてもらえないですね。

たらさわ そう、少女マンガ界においては……。

水樹 受けないから……。

たらさわ ようするにそのひと言ですね。アンケートがすごく重要視されているし。

水樹 それにSFっていうのは、どうしても基礎的なことをある程度わかってないと楽しめない、そういう部分があるでしょ。女の子っていうのは、こういう言い方しちゃいけないんだろうけど、やっぱりどちらかというと身近な恋愛なんかの方に興味がある人の方が多いから、難しい言葉が数行並ぶとパタッと本を閉じちゃったり。
やはりそのへんのところは意識して描きますね。だからといって描きたいことを無理矢理曲げるということはしませんけど。表現が固くなったなと思ったら、なるべく柔い言葉を探して読み易くするとか、描き手からも歩み寄っていかないと……。特にSFみたいなのは読みにくいんじゃないかと本当に思うのでネームが長くなったりしないようにします。

たらさわ 私はデビュー当時は何が何だかわからなくて、わりと好き勝手なことを描いてました。「メルヘン」「プラネタリウムより」「シルバーマン」「パラダイス」というSFの四つのシリーズを描いたんです。もともと同人誌に描いてた作品で三つのお話だったんですけど、編集さんに見せたら描き直せと言われて、四部作にしました。


アンケートは神様デス!

水樹 私は「樹魔」を萩尾先生に見てもらった時、“これなら二百ページあってもいいんじゃない”と言われました。ようするにギュッと詰まってるから、もう少しページをゆったりと描いた方がよかったんじゃないかと。私もそうしたかったんだけどページが……。
でもおかげ様で面白かったというファンレターを頂きまして(笑) 私はあの作品にどういう反応が来るのか全くわからなかったんですね。『ぶーけ』に掲載されたんですけど、読者の層があわないだけじゃなく一緒に載っているマンガと全然雰囲気が違うので、そちらを喜んで読む人たちが「樹魔」を見て喜ぶとは思えない、なんて考えながら描いたのです。たぶん反響なんてないだろうなと……。でも数少い高年令層の人たちが読んでくれて、何より嬉しいお便りを下さって……そうですね……だいたい高校生、予備高生、大学生とか一番小さい子で13才っていう人がいましたけど、わかってたのかなあ(笑)。
今一生けんめい「樹魔」の続編を描いております。

たらさわ 私の場合は頂いた便りにわりと年令的な幅があり、作品に関しては賛否両論でした。あの項は私も若かったから、反対意見にはがむしゃらに返事を書いて“いや、そうじゃないんだ!”とか(笑)。
でもやっぱり変わってきますよね、自分自身が。いろんなこともわかってくるし……。

水樹 アンケートには泣かされてます(笑)。

たらさわ 口絵に紹介されているプレゼントが欲しいために、本誌で三つ面白かったマンガ作品を書いて送って下さい、というようなアンケートに答えてくるんですけどね……。

水樹 プレゼントによってアンケートを出す子の年令層が決まってくるでしょ。そうすると小さい子ばかりのアンケートの上位にくい込むというのは、本当に難しい。

たらさわ だいたいそういうのに応募してくる子って年令層低いでしょ。だからSF作品というのはね……。

水樹 それにしてもアンケートの結果は後々まで響いてくる(笑)。

たらさわ 自分で昔からアンケートの取れない作家だって自覚してるんで、よけい居なおってるんですけど、時々編集の人からアンケートのこと言われると辛いですねえ(笑)。

水樹 萩尾先生も「トーマの心臓」の時に、やっぱりアンケートがよくなくって四回で打ち切るという話が出たんですって。で、先生は激怒して“これは何とかしなくてはいけない!”と急に画面に花なんか散らして華かにした(笑)。ファンレターの返事にアンケー トよろしく!」と書いたら急にバーッと上がって、みんなでよかった、よかったと(笑)。

たらさわ 編集はアンケートを本当にわりきって見てますからね。

水樹 個人的に編集さんが作品を気にいってくれても、やはりアンケートが悪いとなかなか……。

たらさわ アンケートのプレゼントにすごくセンスの悪い長クツが入ってたことがあって、萩尾先生が“こんなのひどい。アンケートの賞品にもこれから編集が少しセンスを考えてくれないと困る。誰か長クツなんかはくか”(笑)。本当にもうちょっとセンスのいいものならアンケートに答える年令層も上がるかもしれないし、幅広くやって欲しいですね。

水樹 でもあまりアンケートのこと言うと立場がなくなるのです(笑)。アンケートを取れないことを言い訳がましくいうとひがみに聞こえるし、取るほどの作品を描いてないと言われたら泣くしかないしで……。だからもう謙虚に仕事を頂くという姿勢で(笑)。

たらさわ 萩尾先生の「11人いる!」はアンケートのトップの方だったそうですね。あの作品は単なるSFだけじゃなく推理的な要素も入っていたでしょ。だから難しいSFのわからない若い読者も楽しめたんじゃないのかな。

水樹 萩尾先生は趣味もマンガというおそろしい人なんですよね(笑)。 仕事が終わって皆でひと休みにお茶なんか飲んで、“何かして遊びましょうか”という話が出ると、“お絵描きしましょ”と言って、また描き始める。好きなんですねえ、つくづく感心しちゃう。仕事じゃなくても年中描いてますから。

たらさわ 生活の一部になってるみたいですね。

水樹 私は絵を描くのが苦手だから、ああいう毎日をみると信じられない(笑)。
先生はアイディアを考えてる時なんか表面は淡々としているんですけど、皆でこたつを囲んでおしゃべりしているうち突然返事をしなくなったなあと思うと、何か案がうかんだらしくて全然違うことを考えてて、こっちの話が終わった頃に返事がかえってくる。だから誤解も受けやすいんですね。初めて萩尾先生のところに来た人が、返事をしてもらえなかったと嘆いたり。先生には全くそんな気はなくて、年中心があちこちに飛んでるだけなんです(笑)。

たらさわ 私なんて以前ずっと少年マンガ読んでたし、それを少女マンガの世界に引き戻してくれたのが萩尾先生なんですよね。少女マンガも変わりつつあるって感じを受けて……。小さい項からずっとマンガ家にはなりたいと思ってましたけど、確実に決心したのは萩尾先生の作品を読んでからですし、やはり自分にとって大きな影響を与えてくれた方ですね。

水樹 萩尾先生に出会わなかったら、私もマンガ家にはなっていなかったと思います。それがはたしていいことか悪いことかそれはこれからわかるんだろうけど(笑)
今はやはり先生と会えてよかったなあと……。これからも萩尾先生にはもっともっと描いてほしいですね。

たらさわ 萩尾先生のSF作品ももちろん好きですけど、コメディーもいいんですよね。
最近は本当にセンスのいいコメディーが少いような気がするので萩尾先生のコメディーが読みたいですね。「ケーキ・ケーキ・ケー キ」とか「アメリカン・パイ」 みたいな作品も描いてほしいと思います。

水樹 もう、何でもいい。萩尾先生の作品なら(笑)。

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