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【トラプロ座談会:少年少女SFマンガ競作大全集2】1979年07月
トラプロ座談会「さん・るーむでお茶をどうぞ……」

資料提供:https://medaka.5ch.net/test/read.cgi/gcomic/164218...


少年少女SFマンガ競作大全集PART2
出版社:東京三世社
発行日:1979年07月25日




少年少女SFマンガ競作大全集PART2本誌74-81ページ
(図版に続いてテキスト抽出あり)

トラプロ座談会「さん・るーむでお茶をどうぞ……」出席者
竹宮恵子
増山法恵(まんがプロデューサー)
田中千賀子(トラプロアシスタント)
LARK・羅亜苦(ジュネ作家、トラプロ臨時アシスタント)
有久祐子(次期さん・るーむスタッフ)
樋口(さん・るーむ会員)
嶋田(さん・るーむ会員)











トラプロ座談会「さん・るーむでお茶をどうぞ……」出席者
竹宮恵子
増山法恵(まんがプロデューサー)
田中千賀子(トラプロアシスタント)
LARK・羅亜苦(ジュネ作家、トラプロ臨時アシスタント)
有久祐子(次期さん・るーむスタッフ)
樋口(さん・るーむ会員)
嶋田(さん・るーむ会員)


サイン会では、読者の熱意を再認識できるのです

増山 ではまず皆を紹介しましょう。ジュネに描いているLARKさん。五月からメシスタントをしてくれるチカちゃんこと田中千賀子さん。こちらはアリさんこと有久さん、そして樋口さん、嶋田さんの熱心なファンの方です。今まではわりと硬いふうの座談会が多かったので、今日はもっとファン対先生というざっくばらんなところでお話しましよう と…。先生といっしょにファンとの交流ということでいろんなとこへ行くんです。先月( 月)末大阪へ行って、サイン会や援会の集会へ出て 来まして。

竹宮 ティーチ・インていうのやったんだけど硬い質問ばっかり。どうも抽象的、学問的になっちゃって、私なんか頭脳の方が……(笑)。

増山 もっとお話会っていう感じにすればよかったのよね。みんな緊張しちゃったんだと思うの。ひとり口火を切ってバカな質問すれば、いっばい愉快な質問が出たと思うの。

竹宮 数をすごく制限してたし、会場に入れる人は少くて、見れない人はどっかからのぞくしかない。時間もなかったし。

増山 楽屋口で正座して聞いたり(笑)。だけど会場の係員、スタッフの人たちがファンに何も文句を言わないのは気持ちよかった。東京だとスタッフがちょっとヒステリックになるの。何か事故が起きるのを心配してだと思うけど。

樋口 うん、サイン会も場所によってすごく感じ悪い時がある。夏に西武でやった時なんか、あせった係の人がどなたっりして。

増山 ファンよりも大人の方が熱気に圧倒されてヒステリックになっ ちゃうみたいね。こっちは初めてじゃないから勝手はわかってるのに。

嶋田 サインもらうにしろ「待ってろ」と言われれば、私達はおとなしく待ってるのにね。

増山 先生はサイン会に出すぎるっていう意見もあるけどどう思う?

嶋田 私はサイン会好きだな。先生の顔みたいし何か言ってほしいから。

増山 ああいうイベントは先生にとって読者の熱意を再認識できるっていうメリットがあるのよね。

竹宮 ファンが大勢いる所に、ただ立ってるだけで、あ、今の私は調子が悪いんだなとわかったり、ファンの熱狂度によっていろいろ感じるものってあるわ。

増山 ファンクラブや集会なんかは一種恋人的熱気があるわね。先生はそれにめげてウツ状態になったりするけど……。

竹宮 ウツというと語幣があるな。気重になるのね。みんな言いたいことあるから、いろいろ私に注文するのね。でも全部背おうわけにいかないから。

LA でも先生はやっぱり偉い。並たいていの神経じゃできない。例え ホメ言葉が書いてあるにしろ、かえって浸触されるからファンレターは絶対読まないという作家だっているくらいだもん。完全に排斥することで自分の世界をつくるわけ。それわかるけど、先生なんてネ、少しくらいウツになるくらいでようやるよ(笑)。

竹宮 やめる気ないわね。ファンの反応知らないと逆に不安で。

増山 ものすごいスランプの時期があったでしょ。私が側で見てても、わかるくらいにとってもひどい時期が。その時初めて三越でサイン会を催すという企画があって、そしたら、思いのほかファンが集ってくれて、あの時はとっても救われた気分になったでしょ。

竹宮 よく来たなあって(笑)。(ファンは)あきらめてんじゃないかと思ってたのに。『ファラオの墓』が始まる前か一回めの頃で私がホントにウツ、ウツ、ウツの頃。気ウツだったから真っ赤なジャンプスーツを着て行った。

増山 あれ以来、遊びぐせがついたでしょ。サイン会でドレスを着るという(笑)。

竹宮 そう、あれ以来よ(笑)。

LA 気晴らしになるんでしょ。

嶋田 私達も楽しみです(笑)。


プロをめざすのは、並大抵のことではないのです

増山 先生はホントに根っからの長編作家なのね。我々の時代は週刊誌に連載を持つことが一流になる目標だったものね。

竹宮 週刊の全盛期だったから最初からその事しか考えなかった。

LA 今の新人みんな読み切り体制だもんね。

竹宮 つまり話は作れるけどキャラクターが作れないんでしょ。

LA あ、それ言えるね。

増山 感性とかストーリーとか出すのは得意だけど。

竹宮 キャラクターができれば、あとは組み合わせを変えればいいのよ (笑)。

LA キャラクターができないと人気は出ないでしょう?

増山 みんなシーンと聞いてないで(笑)。アリさんなどはやっぱりプロになろうと思っているんでしょう?

有久 ええ、やっぱりなりたい。

増山 今年、大学でしょ、危険な時期でもあるわね。マンガ以外に楽しいことがいっぱい出てくるからそこでスパーッとやめちゃう人多いのね。

田中 今、マン研からはめったにプロが出ないね。

増山 どうしてかしら??

樋口 みんな趣味的に描いてる。

LA みんな自分で補いきれないところを寄り集ることによって補おうとしてる(笑)。自己満足集団におち入って。

田中 それはそれでいいと思うんだけど。

増山 それで楽しめればね、もちろん。ただ私とか先生などは第何期同人誌ブームなんていわれるCOMの時代で、あの頃は確実にプ口をめざす集団だったんだけど。

LA うん、自己満足集団とは、はっきりけじめがある。だからやっぱりそういう、いい漫研からはプロが出てくる。私がいた女子美の漫研でも、一応歴史は古いクラブだけど、内田善美さんなどは、もう既にクラブとは関係ないとこで描いてるという感じだった。そうじゃなきゃやってけないよ。部活動に関わってるとねえ……。 だから方向は全然違ってくるものじゃないかな。

増山 私達の時代は高校生でプロになれなきゃダメと言われた時代でね。卒業するまでにプロになろうと、必死だったわね。

竹宮 現在は、要するにハングリーじゃなくなったのね。

LA そう、ハングリーじゃねえんスよ(笑)。ハングリーな人もいるけど。


まんがエリートは、視野を広く持つべきです

増山 ところで、私、まあ、こんな分け方したくないけど、一般ファンとかミーハーとかマニアっていうのがあるわよね。

LA 私は、ミーハーでございます(笑)。

増山 ファンの手紙で「自分はマニアです。ミーハーなどけちらせ」ってのがあったの。自分はマニアであるという自覚を持ってる人がいるわけね。私は莫然と世間が分けてると思ってたけど、自らわけてる人もいるのね。わりとそういう人こそマニア雑誌で発言したがるみたいね。

竹宮 すごいのよオ。こんな手紙もある。「あなたは自分のファンがミーハーだと思ってるから“マンガ少年”みたいなマニア雑誌に描くのはいやなんでしょう」とか。『風と木の詩』休んでまで“マンガ少年”に誠意つくしてんのにあんまりな(笑)。

増山 だけど私思うに、先生がスランプ時代に、にこにこ、にっこりついてきてくれたのは一般ファンといわれる人たちだったのね。マニアっていうのは、作家の調子が悪いと突然非難したりするじゃない。それを悪いとはいわないけど、明らかに作家は傷つくし、調子が悪いのは誰よりも本人が知ってるのに。

竹宮 悪い時ばかりでなく、良すぎてもいろいろ言うのね (笑)。

橋口 かわいそう。

竹宮 自信過剰とか、思いこみすぎてる、スター意識が強すぎると か。(笑)

LA 私はスター!(笑)

増山 さん・るーむのよさは会長さんの性格から来てるかもしれないけど、理屈抜きで楽しむものだったのね。あれでいいんじゃないかな。

竹宮 まあ、こういっちゃ何だけど、理屈こねてもマンガはよくらない。理屈こねる暇に支持してくれた方がいい(笑)。マンガ家が結局新しいものを開拓してくわけでしょ、マニアじゃない。だから自分の好きな作家をとことん支持するんだったらマニアもいいでしょうけど。 私はCOM時代にまんがエリートってどういうものかっていう、ある程度の概念を持ってたのね。どういうことかというと、ある作家を支持するばかりでなく、もっと広い意味でマンガの技術とか感性というも のを評価していく。ひとつの作品を客観視していろんな良さを見られるのが、まんがエリートだと思ってた訳。マニアをまんがエリートだというなら、もっと視野に広さがないとダメだなあと思う。

LA 私わりかし自分がマニアのつもりでいたんだけどな、今まで は……。萩尾さんのマニア批判に最初は怒り狂ったの。私自身マニアっていうのはもっと違うもんだと思ってた訳。そしたらマニアってすごいんだよね。何つうかもう……(笑)。

樋口 私はきちんと区別はつかないんだけど。ただ単にマニアっていうと切手収集マニアとか、あんなイメージ、集める人……(笑)。

竹宮 コレクターの意味ならかまわないけど、萩尾さんが批判してるのはそういうんじゃないのよ。

増山 常識を逸してるものね。大泉サロンの時代の話だけどね、地方から来たマニアが先生達に会いたいと言うけど仕事中だからと断わったら、逆恨みしてひどいウワサをバラまいたの。ファンレターをチリ紙交換に出してるとか。もう、根も葉もないことを。


独断と偏見をおしつけるべきではありません

竹宮 冗談でそんなこと言った覚えは確かにあるけど、今ウチの押入れはファンレターで一杯よ。チリ紙交換に出したことなんてないもの。ファンは単なるうわさといっても、こっちはそういうこまかいとこで傷つく。

嶋田 かわいそう。

増山 ひとつやふたつじゃないのよね。そんな例。あきれはてるくらい、ちょっと虚言症じゃないかと思える程、明らかな虚言うの。○○は実は私の作品で、大泉に遊びに行って竹宮に話したら、竹宮が描いたんだとか。

樋口 おそろし〜〜(笑)

嶋田 でも、それ信じる人もいるんでしょう?

竹宮 うん、そういうのって週刊誌的なものだから、わりと興味をひくじゃない。口から口へとおひれがついて。その時どうして作家を信じずに、うわさを信じるのかしら、子供だからかな。公平に両方を見れば、うわさのアホらしさなんてすぐわかるのに。

嶋田 うーん、まだ判断がつかなくて信じちゃうのかも。

田中 印刷された言葉だと特にすんなり受けいれちゃうしね。

増山 すごく可愛いウソもあるのよ。一度も会ってないのに何度も竹宮恵子に会ってますとか、自分が呼べばすぐとんでくるとか。

LA そういう可愛いウソならいいけどね。

増山 描き手がマニアを恐がるというのは、よくわかる。独占欲みたいなのがチラチラ見える。

竹宮 所有してるような気分になっちゃうのね。独断と偏見のきつい人はいるわね。そりゃ誰でもそういう点はあるけど常識を越えてるもの、それは自分だけの意見にすぎないという自覚がないのね。はては自分がこきおろした作家をつかまえて「あなたもそう思いませんか?」といいかねないんだもの。(笑)

LA ああ、そうか。マニアは独断と偏見を人におしつけようとするからいけねえんだ。(笑)ミーハーは独断と偏見を……どうすんだ?(笑)

田中 楽しんでるんでしょ。

増山 一般ファンとは、独断と偏見をのりこえて、ただひたすら愛情だけで……。マニアは「『風と木…』は終わってないから評価しない」なんてことも言うもの。

竹宮 あの作品は、 もう発表したということだけで自分にとっても読者にとっても意味はあったと思うな。結果の問題じゃないの。あれは完結の仕方ではなく存在することの方が問題だと私は思ってるの。

増山 ホントにマニアが作家をつぶすということありえるものね。

竹宮 あるんじゃないかしら。絶対あると思う。

《お茶会後記》
都内某所にあるピンクのマンションの二部屋が竹宮先生の仕事場、トランキライザー・プロダクトです。白木のテーブルが置かれた一室にて行なわれたファンとの小さな集いでした。
「全国に大勢いるファンの中で、たまたま私なんかが、こういうところに出ちゃっていいのかな。ワー、うらまれ そう!」と、S嬢は最後に言っておりましたが、どうかうらまないでやって下さい。



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