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【岡田史子「前略 萩尾望都さま」】


少女SFマンガ競作大全集
出版社:東京三世社
発行日:1978年11月25日


資料提供:https://medaka.5ch.net/test/read.cgi/gcomic/164452...



岡田史子「前略 萩尾望都さま」



岡田史子「前略 萩尾望都さま」

十年ひと昔と申しますから実に昔のことであります。当時望都さまはデビューなさってまもなく、おそれ多くもかき直しを命ぜられたり、もったいなくも私ごときアルバイト・マンガ家(他に生業をもっていましたので))のところなどどもお訪ねくださったりしておいででした。
また後には、なんとお手料理をふるまって下さったこと、ひとつ部屋に枕を並べて休むことをお許しくださったことさえあります。
その頃は私も若く、望都さまの偉大さがわからず、なんと『彼女は私のファンである』などと考えておった次第でございまして、汗顔の至りであります。
でございますから、せっかく望都さまとお会いする機会を賜わりましても、ご下問にお答えするのを専らとしてこちらからは何ひとつおたずねも致しませんでした。
そうして望都さまがついに本性──ではない、頭角を現わし、少女マンガ界の歴史を変える偉業を成し遂げようとなさっている頃、私めはマンガをやめて田舎にひきこもっておりました。
そのために、つい最近まで知らなかったのでございます。望都さまの偉大さを。その人気ぶりを。もうかり方を。私づれが足元にも寄れぬお方であったことを。
なんというウカツさ、なんという恥さらしでありましょう。
そしてなんと淋しいことでありましょうか。
『彼女は私のファンである』などというのは冗談として、私としては望都さまを友だち、少なくとも仲間と思っていた……思いたい、のであります。
しかるにあの方は速やかに、あまりにはやく、星となってしまった。凡人の手のとどかぬあの大宇宙へかけのぼっておしまいになった。輝く少女マンガの星となられたのです。
淋しく、悲しく、わびしいことです。
公共的出版物誌上に私情ばかり並べてごめんなさいね。
少なくとも、自分だけでも望都さまを仲間と思っていたなら、仲間の栄達をよろこぶべきなのでしょうね。
でもそんなことできないわ。シットというものがある。
とまれ、望都さまは悠久の歴史のむこうや無限の宇宙をみつめることのできる方、地べたをはなれられない自分の内側ばかりのぞいている者とは次元がちがう──しょはせんちがう世界に住むお人──と、そう、あきらめるよりないのです。
草々 岡田史子

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