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【女の子を魅了『少年同士の愛』】




掲載紙:不明
掲載日:1978年04月21日か22日

資料提供:https://medaka.5ch.net/test/read.cgi/gcomic/165995...



女の子を魅了『少年同士の愛』
禁断の香り、新鮮さ、孤独…


西ドイツの高等中学を舞台に、思春期の多感な少年たちの愛の世界が、はなやかに輪舞!

少年たちのおりなす夢と愛とロマンの世界が華麗に展開!

愛と孤独に悩む、少年たちの閉ざされた世界…。

どれも、少女マンガの巻頭にかかげられたキャッチフレーズである。 四年前(註:1974年)、「ベルサイユのばら」で、男装の麗人オスカルが登場し、少女たちを魅了した。ここ二、三年は、少年同士のくりひろげる愛の葛藤 (かっとう) が、彼女たちをとりこにしているらしい。ちょっぴり禁断のにおいを放ち、少女たちを誘うのは、どんな世界?


大ヒットの二作品

「風と木の詩 (うた) 」(竹宮恵子作)。十九世紀の後半、南フランスのある町の全寮制の男子校に、ジルベールという一人の美少年がいた。物語は、ジルベールと、彼をとりまく少年たちをめぐって展開する。十歳かそこらで男色家の手にかかり、唯一の保護者、叔父オーギュとも肉体的に結ばれた、という生い立ち。しかも、オーギュは、実はジルベールの父。兄の妻と密通して生まれたことが解き明かされる。そのオーギュも、兄にいやいやながら愛された暗い少年時代を背負っている……。

週刊少女コミックに五十一年から連載 され、すでに単行本が七巻。あわせて百三十万部売れた。長編ものとしては、ベルばら以来のヒットだと小学館ではいう。

少年たちをテーマに描く女流マンガ家は五、六人いる。なかでも代表的なのは、竹宮さんと萩尾望都さんだ。

萩尾さんの四十九年に発表された「トーマの心臓」。学園のアイドル、やさしく美しい少年トーマが自殺した。彼の愛を拒み続けたユーリ君が、トーマとそっくりの少年エーリクや級友たちの友情で、再びあたたかい心をとり戻すまでが、感動的に描かれる。これも三部作の単行本になり、六十万部の売れ行きという。


新しい性と人間観

最近になって少女マンガを読み始め、とくに「風と木の詩」のファンというOL●●●さん(二一)=大阪・茨木市=は「王子さま、お姫さま的なものや、学園のチャラチャラしたものにくらべて、とても新鮮な感じがした。暴行シーンやベッドシーンも気になりません。愛の本質は男でも女でも同じでしょうから、少年同士の愛も、わかるような気がする」。

芦屋市に住む大学一年生、N子さん(一八)は、萩尾望都ファン。「同性だから不潔なんて、全然思わない。 私でもあこがれている女の子がいます」という。読者の方にはたいして戸惑いがない。

竹宮さんは次のようにいう。
「少女の世界だと、たとえば同性愛なんかでも秘密になって、暗い部分へと押し込められていく。少年にはそれがないから描きやすいんですね。父と娘であろうと、少年同士であろうと、どんな感情のふれあいがあるかが問題なのです」

「風の木の詩」の少年たちは少女のように美しい。しかし、同性愛、近親相姦(かん)……と、 ここにはいわゆる常識的に見てショッキングな場面が次々に登場する。そして詩人の寺山修司さんが、その第1巻のあとがきで次のような賛辞を贈っているのだ。

「従来、少女文化のなかで扱われてきたセックスは、結婚生活の一つの手つづきか、あるいは“生殖と育児”の手段でしかなかった。(略)だが、竹宮恵子はそうした古風な倫理をすっぽりと捨てて、より根源的な意味で、セックスをとらえ直してみせた。(略) 「風と木の詩」には、いつのまにか新しい性のモラルだけでなく、新しい人間観が息づきはじめたのであった」


不毛の中に突破口

少女マンガにくわしい評論家、中島梓さんは、少年ものに夢中になる少女たちを、こう見る。「いま、少女たちはひとりぼっちなのです。いつか王子さまが自分を迎えに来て……などという幻想は、もう持てない。男と女の愛は、結婚という形で完結しうる。ところが、少年同士の愛は家族という単位をつくるという点では、はじめから不毛ですね。だから、かえって愛とは、とか、人と人との真の結びつきは、といった深い追求が可能になる。最も不毛な愛の中に突破口をみつけようとする作者の姿勢が共感を呼ぶのでしょう」

「ぼくのほしいものを、だれもくれやしないのさ。熱いふれあい、たぎる血の思い──」。このジルベールのつぶやきは、独法な現代の少女たちのつぶやきなのかもしれない。

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