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【対談:石森章太郎・竹宮恵子】

初出:フラワーデラックス・竹宮恵子・愛のイラスト作品集
再録(抜粋):続マンションネコの興味シンシン


フラワーデラックス・竹宮恵子・愛のイラスト作品集
出版社:小学館
発売日:1977年01月03日



続マンションネコの興味シンシン
発行所:角川書店
初版発行:1984年10月05日




師弟対談:石森章太郎・竹宮恵子
1977年「フラワーデラックス・竹宮恵子・愛のイラスト作品集」134-137ページ
(図版に続いてテキスト抽出あり)





師弟対談:石森章太郎・竹宮恵子

少し早めに到着した竹宮先生は、まんがの師とあおぐ石森先生に一年ぶりで会うということで、やや緊張ぎみ。まもなく現れた石森先生はカンロク十分に「やあ!」と奥の席へ。あいさつもそこそこに、なめらかに話し始める石森先生で、対談はくつろいだ雰囲気のうちにスタート! さて、おおいに語り合う、二人の話題のゆくえは……!?


仕事を早くあげるコツを…(竹宮)

石森 今日はボクが質問するの? 聞かれる方?

竹宮 もっぱらわたしの方で聞きます。このごろ「まんが家入門」を書かないかっていわれるのだけど、わたしがまんが家になろうと決意したのは、石森先生の「まんが家入門」 を読んだからなんです。わたしがかくのはまだ早いけど……。

石森 「少女まんが家入門」か、おもしろいじゃない。ボクは最近、すでにまんが家になっている人、セミプロの人のための入門書を書こうかと思っている。編集者の扱いとかネ。

竹宮 ぜひやってください。しめきりを遅らせる法とか……(笑)

石森 ウン、教えてやりたいネ。

竹宮 今は月に何枚くらいですか。

石森 ウーン(と考えて)三五〇枚から四〇〇枚ぐらいかな。

竹宮 一時期七〇〇校というのを聞いてましたけど。

石森 そこまではいかないけど、六五〇枚ぐらいというのはあるよ。今の三五〇枚というのもボクが実際描いているのがそうなんで、ボクの名まえで出ているものすべてだったら七〜八〇〇枚はいくよ。

竹宮 わたしはその半分もいかないのに、なんでそんなにかけるのかな……。連載は何本ですか?

石森 ウーン、週刊誌二本、隔週誌二本、月刊誌が三本、新聞その他をいれるとやっぱり十本ぐらいあるナ。原稿が遅いそうじゃないか。いつも校了日のあとにあがるって聞いているぞ。

竹宮 ええ……。やっぱりわたしは器用じゃないんだワ。遊びに行かないからダメなのかしら(笑い)そういうことがあるのかもしれない。

石森 じゃあ遊び方を今日教えてやろう。でも、もっと遅れても知らないよ。

竹宮 早くあげる法も教えてください。

石森 要するに遊ぶ時間をとって、そのあいまに仕事をしているわけ だ。だから出るためには仕事をしなけりゃいけない。短時間でパッとやっちゃうわけだ。あとが苦しくなるからね。

竹宮 そうするとわりと予定通り原稿をあがるわけですね。わたしなんか、自分でもいつあがるのかよくわからない。気がすすまなくって、いつまでもイジイジやっているようなところがある。

石森 ボクは昔から、パッとやって時間がくれば「はいおしまい」ってところがあるから、そういうことはないネ。

竹宮 わりきることが早いんですネ。

石森 仕事やってて一番楽しいときはアイデアの段階だろ。絵は肉体労働だから苦しさ半分だよな。だから苦しみは早くすませるわけだよ。

竹宮 わたしは絵を描くときがよけい楽しくなるんです。アイデアでは逆に苦しんだりして……。

石森 週刊誌連載で二十枚ぐらいかくのに、どれくらい日にちかかるんだい?

竹宮 十分といえるまでには、五日ぐらいかかっちゃいます。でもいつもはそんなにかけられないから、三〜四日です。

石森 ボクは一日だな。ネーム含めてね。

竹宮 恐ろしい。そのへんの違いはどこからくるのかしら。

石森 体力と能力の差だ(笑い)

竹宮 集中力の差とか。

石森 ボクらは遊びの世界で生きてるわけだ。仕事といっても楽しみながらやってきたんだ。だから遊ぶといっても、一般の人たちとはことなった遊びをしないと気分転換にはならないんだ。

竹宮 仕事と遊びとどっちが楽しいですか?

石森 遊ぶ方が楽しいよ。いかに仕事場からのがれてくるか、それが仕事を早くあげるコツでもあるんだ。でもどっちも楽しいもんだよ。

竹宮 仕事以外の楽しみは何ですか。

石森 お酒をのむこともそうだし、 旅行に行くのもそうだ。まあ一杯飲めよ。(ビールを一ロゴクリ)


あだ名はちょうちんアンコウ

石森 今でもあんまり印象はかわってないけど、最初会ったときはどうも変な子だなと思ったよ。(笑い)

竹宮 どうしてでしょう。わたしも変だなと思ったんだけど。(笑い)

石森 連絡もなしにヒョイと来て、次の朝になるといないんだよ。そして夜になるとまた帰ってきて、知らぬまにまたいなくなっている。それが二〜三回続いたなあ。その次会ったときはもう東京に出てきて、まんがかいているんだって……。

竹宮 自分でも石森先生をまんがの師と言っているわりには、何もまんがの話はしていませんね。当時おなさけでちょっと手伝わせてもらったくらいで、アシストの経験もないし。「まんが家入門」がすべてで、ろくにしゃべりもしないで顔を見ただけで帰ってしまった。なにをしに上京したのか……。

竹宮 常盤荘時代に皆でアダ名をつけようっていうのがあって、石森先生はちょうちんアンコウというのがついていた。いつでも奥にいてまんがばかりかいている。そして無口だというのでそうなったというのを当時なにかで読んでたんです。だからそれを確かめるつもりでいたんですが、やはりそうでした。(笑い)

石森 今はかわってるよ。

竹宮 当時、先生は「千の目先生」をかかれていて、わたしの手伝ったところがあるはずです。

石森 昔の原稿を見てると、バックに水野英子の絵がはいってたりしておもしろいネ。編集者なんかでは、ボクの第一印象をこわいと言うのが多いな。アシスタントですそう言うよ。だから考えてきたことを一言も話せなかったなんてあとから言うんだよ。

竹宮 わたしは、こわいとは思わなかった。

石森 そうだろう、ボクの方がこわかった。

竹宮 エーッ、それはないでしょう!(笑い)どこがですか。

石森 あの頃は家出の娘が多かったからネ。また一人出て来たか。(笑い)

竹宮 あの時は石森先生が監修していた同人誌『宝島』の会合があって出てきたんです。で、仲間たちが石森先生の家は泊まれるところがあるからというんで行ったんです。それで今度新しくプールを作ったから水着を持ってこいと言われたんです。だから正直にわざわざ水着を持って行ったんですがとうとう着ずにおわってしまって……。

石森 それは残念だった。見れなくて。

竹宮 あの時はだいぶ太っていたから。今もだんだんあの時に近づいてきちゃって……。

石森 体つきは今もあんまりかわってないだろ。

竹宮 一時期すごくやせてたんだけど、そのころはお会いする機会がなくて。


まんが家は十二年周期で出る?

竹宮 先生は、まんがかき始めて今年で何年目ぐらいですか?

石森 二十年になるかなあ。

竹宮 わたしは九年目です。十年くらいで一つの波があるんですかネ。

石森 十二年で周期があるみたいネ。

竹宮 それにあてはまらない人がひがんじゃうけど、そういうのがあるかもしれませんね。

石森 あんたはトラ年かい?

竹宮 そうです。

石森 ボクもそうだが、ボクと同じ世代には、つのだじろう、園山俊二、赤塚不二夫、ちばてつや、さいとうたかを、といった連中がいるからね。

竹宮 すごいですね。でもどうして。

石森 やっぱり、まんがの第一次ブームで、まんがにみんな情熱を持っていたね。これからかわるんだという意気ごみがあったしね。

竹宮 手塚治虫先生とはいくつ違う んですか?

石森 やはり十二歳違うね。あの人確かトラ年だから。

竹宮 ワーッ、やっぱりそういうことになってるんだ。手塚先生に影響を受けた人たちが十二年後に出て、それにわたしたちが影響されて、まんが家になってるんですね。この次はどのくらいかしら。

石森 今、やっぱり少女まんがの読者なんだな。

竹宮 おもしろい現象だナ。


まんが家は十年で一人前?

竹宮 ちょっとむずかしい質問があるんですが。デビューしたころ、つまり”COM”のころと、今と作家として考え方の違いというのはあり ますか。

石森 違わないよ全然。考え方は違わないけど、感覚とか技術の違いはあるだろうね。今いちばん描きやすいというのは「さんだらぼっち」などのおとなものなんだよな。おとなものの方が、苦労なくかけるんだ。年齢に応じて、描きやすいものは違ってくるよ。

竹宮 わたし二十六歳なんですが、このごろは青年とおとなとの、わかれ目でむずかしいんですが、なにを描いておられました。

石森「009」シリーズとか、「佐武と市捕物控」あたりだな。「00 9」は二十四歳の時から描き始めたんだ。だからつまり、エンターティメントに徹しようと思い始めたころだ。やっぱりまんがは楽しくて、みんなが喜ぶものであるべきだという考えに移行してきたんだ。

竹宮 それが「009」のころですね。

石森 その前は、みんなからわかんないとか、いろいろ言われていた時代だな。少女クラブとかにのった一連の作品が、マニアにはうけるが一般うけしないとかいろいろ言われた。

竹宮 わたしも、それくらいの年からかわると、いろんな人からいわれるんです。十年をすぎないとまんが家として一人前じゃないんですって。

石森 やっぱり、まんがはできるだけ多くの人に読んでもらうようにしなくちゃ。作品のはばも広くしないとね。それだけ批判も多くなるかもしれないけど。

竹宮 わたしも同じ道を歩んでいるみたい。とくにそうしようとは思ってないのに……。今は「風と木の詩」を連載してるんですけど、これを転期にわたしも変わるような気がします。

石森 読者にこびるというわけではないんだからね。

竹宮 まんがを描き始めた動機ってなんだろうって最近考えるんですが。

石森 描き始めて十年というのは、情熱もあって、まんがは芸術になりうると思ったりして、自分はそのつもりで描いているのに、だれも評価してくれないという人がいる。ところが見る人が見ると、技術がともなってなくて、おもしろくもない。そういういらだちとあきらめが、デビュー十年後ぐらいにくる。そこで、もっとみんなにうけるもの、自分も楽しんで描けるものを描こうという気になってくるわけだ。その時点で新しい読者がついてくれば、しめたものだ。

竹宮 わたしは、まだきれいごとを言っていますが、この十年というのは、ファンと編集者と自分の理想といったものとが、戦争しているような状態ですね。若いころ、ごく素直な作品を描いていたのを忘れてしまっているんです。忘れていたなと気づき始めたのが今ごろで、そのうちかわると思うんですが。描きたいものを描けば、昔のような絵でも描けると思いますが……。

石森 ボクが意識的にほかからの束縛なしで、描きたいものを描いたのが”COM”の「ジュン」なんだ。人間とはなにかみたいなテーマで、自分自身の一つの総決算のつもりで描いたよ。今はまたかわってるけどね。

竹宮「ジュン」の色紙をいただいて、まだ部屋に飾ってあります。わたしが大学のころかな、描いてもらったのは。

石森 ボクの場合、読者のはばはすごく広くて、「ロボコン」のファンは「さんだらぼっち」なんて知らないだろうし、その逆もあるしね。


はやりや人気は気にしない(石森)

竹宮 読者の声が気になることはありませんか。

石森 ないね。全然ない。おまえさんは読むのが仕事だけど、描くのはこっちだからなんてね。なかには、ああ忘れてたなという指摘もあるけどね。でも今さら元にもどれないしね。

竹宮 読者の声を気にしないということは、はやりや人気も気にしないということですか。

石森 ウン、あんまり気にしない。好きでやってたのが、たまたまバカうけしたとか、全然うけないとかあるけど、いちいち気にしていたらなにも描けない。

竹宮 人気のとくに出た作品というのは、運もあっただろうし、時流にものったんだと思いますが……。

石森 ウン、運もあるし自分ものって描いて、自分が時流を作ったんだという意識もあったね。

竹宮「009」以後で、気に入った作品というのは?

石森 「009」前後が、いちばんおもしろがって描いていたからなあ。 「おかしなあの子」とかね。あとはまあ「佐武と市……」なんかだなあ。

竹宮「仮面ライダー」はどうですか?

石森 気に入る気に入らないの問題じゃないね。ボクのはアイデアだけしかはいっていないんだから。「はいっ」てわたして、映画会社が作っちゃうんだから。ボクのすべてがはいっているわけじゃないんだ。

竹宮 そういう意味で、いまのって描いているのは「さんだらぼっち」ですか。

石森 そうね。楽に描いているのはそうだな。

竹宮 "COM”みたいなマニア向けの雑誌がまたできたら、それに描く気はありますか。

石森 ウーン、(一呼吸おいて)マニア向けでなく描きたいな。たとえば、「ジュン」みたいな作品を描くにしても、商業誌の中で定着できるようなものにして描きたい。マニア向けのものの方が、描くのも楽だけどね。

竹宮 読者に期待するものはありますか。

石森 それはないね。読者は受け身だけれど、まんがを選択する自由があるわけで、それに期待はできない。昔はまんがにも、ある意味できまりがあったけど、今はまったくないよね。はばが広くなったというか、変な線でもけっこううけてる。


後世、まんがは芸術と言われる

竹宮 まんがの可能性みたいなものを聞きたいんですが。

石森 可能性としては、まんがは芸術にもなりうると思う。現代の芸術の定義にあてはまる作品はないかもしれないが、後世、まんがは芸術と言われるよ。

竹宮 エンターテイメントに適した作品は、芸術じゃないという考え方があるでしょ。

石森 いや、歌舞伎だって落語だって、昔は大衆の楽しみだったわけだろう。つまり、エンターテイメントに適していたわけだ。それが、いまや芸術祭奨励賞だ。やっぱり歴史が必要じゃないの、まんがにも……。

竹宮 でも、そうなっちゃったらおもしろくない。

石森 ウン、まんがはやはり、底辺の喜怒哀楽をテーマにしているところがあるからね。

竹宮 いま、ドマニアが集まって、芸術がどうだこうだと言っていますが。

石森 それは、やっぱり本物じゃないな。

竹宮 マニアについては、わたしもよく聞かれるんですが、なにかありますか。

石森 マニアが、一人のまんが家をだめにしたり、よくしたりすることがある。よくはたらけばまんが家はのびるけど、悪くするとサッパリだめになる。たとえば、白土三平が一時、おもしろくなくなった時があるだろ。評論家とマニアが、いわゆる唯物論的なものが、作品にはいってなくちゃいけないなんて言いだしたころだ。彼が楽しんで描いていたころは、すごくおもしろい作品だったけど。つげ義春なんかも困ってるんじゃないか。

竹宮 なるほどね。まんがと劇画の違いってなんでしょうか。

石森 ボクは違わないと思うね。メディアとしてはまったく同じだよ。

竹宮 ただ、まんがだけのよさというものがあるような……。まんがだったら、人に制約されずになんでもできる。たとえば映画だったら、監督とか脚本家とかに左右されるでしょ。それがなくて構図もコマわりも全部自分でできるわけですよね。

石森 ただ、映画は何十人もの力が集まっている。まんが家は、すべてそれを自分でやらなきゃいけない。それには時間がない。週刊誌はとくにね。

竹宮 週刊単位は、やはりものを作るには無理があると思います。こんなこと言うとしかられるけどね。やはり分業にしないとやっていけないから……。昔はみんな月刊だったんですけどね。

石森 読者のこらえ性がなくなっちゃったんだね。次の発売を待ちきれないわけだ。出版社の方の商業ベースもあるけどね。

竹宮 先生のおとなものは、劇画と言えるんですか?

石森「佐武と市……」は劇画を意識して描いているのは確かだが、劇画とはいえないだろう。「さんだらぼっち」は、またひと味かわった作品だと思うね。落語の世界を表現するには、リアルな絵はダメだから、やはりああいう絵になる。


作家は自分の世界にひたれない?

竹宮 スランプというのがあるんですけど。

石森 遊びたくなることはあるけどスランプというのはないね。

竹宮 うらやましい。女流まんが家は結婚するとダメになると言われますね。

石森 そんなことはないだろう? よっぽどダンナが悪いのか……。

竹宮 よすぎるってこともあるんでは。

石森 かもしれんなあ(笑い)。まんが家が売れて、金をもうけると作品がおもしろくなくなるってよく言われるけど、やっぱり自分の欲求をまんがにぶつけるということも大事だからね。家庭にはいって落ち着いちゃうと描けなくなるってこともあるだろうな。でも、それはそれで別の質の作品を描けばいい。のんびり幸せでなきゃかけない作品もあるはずなんだホントは。

竹宮 少女まんが家みたいにせまい世界で、家にとじこもってやっている人はどうしたらいいのかしら。

石森 ボクはなんでもやりたい方だからね。映画も作りたいし、本も、できれば歌も歌いたいね。(笑い)

竹宮 成功、不成功というのは気にしないんですか?

石森 関係ないよ。自分が楽しめばいいんだよ。

竹宮 楳図先生の歌はお聞きになりました?

石森 いや、どうなの?

竹宮 うちのアシスタントさんたちはよく歌ってます。印象に残る歌らしいんです。作家になると、自分の世界にとことんひたることができないって、以前言われてましたが、どういうことですか。

石森 たとえばね、クラブなんかへ行ってね。ああこの子はいい娘だと思ったりしているとね。相手が自分の読者で小学校のころ先生の作品を読んでましたなんて言われるとね、こちらがおしゃくしなきゃいけなくなる。くどくわけにもいかなくなるしね。(笑い)

竹宮 そうですか。そういうことはとてもいやですね。

石森 また女の話になるけど、クラブで女の子が寄ってくる。でもそれはボクの作品のファンであって、ボクの人間性に魅力があって寄ってきたわけではないと思うわけよ。いつも不安になるんだ。だからボクがもし好きになる女性がいればそれはボクの作品をまったく知らない人だろうな。

竹宮 妻子をふりすてて、なにかやろうという気にはなりませんか。

石森 そうしたいと思うけどなかなかやらせてくれないね。

竹宮 わたしばっかり質問しているけど、最近の少女まんがはどうですか?

石森 一時期の保守性からぬけ出 て、ジャンルもいろいろ広がった し、かき手のいいのが出てきたと思う。男のまんが家でもかなわないというのがいる。でもまたちょっと横ばい状態じゃないのかね。これは本を作る側にも問題があるんだろうけどね。せっかくかき手がそろってるんだから思いきった企画でやってほしいね。作家もそれにこたえなきゃいけないけどね。

竹宮 わたしは少年誌や青年誌に思うのは、そういうものがあってもいいと思うけど、なんか世界が違うようで、近よりがたい気もしますね。

石森 今一番なにがしたい?

竹宮 遊びたいというか、毎日暮らすことを楽しみたいですね。一度もそれをしたことがないから。

石森 ヒマはあっても思うことはできない。いそがしい中でいかにヒマを作るかだな。今でも一日一時間は本を読んでるし、みたい映画もみてるしね。

竹宮 どうしたらできるんですか。一日が五十時間あるみたい。(笑い)


───ここまで料理を食べながら一時間三十分、閉店の時間がきて残念ながら対談はうちきり。今日は、もう仕事はないという石森先生は、このあとも"遊び"の予定がびっしり。竹宮先生はまだまだ仕事が……と言いながら寒風の戸外へ。対照的なお二人を、複雑な気持ちで送り出して、本日の師弟対談、 はおしま〜い。




師弟対談:石森章太郎・竹宮恵子
1984年「続マンションネコの興味シンシン」
(テキスト抽出なし)





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