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【竹宮恵子インタビュー:キネマ旬報1980年5月上旬号】

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キネマ旬報1980年5月上旬号(785号-通巻1599号)
発売日:1980年05月01日
出版社:キネマ旬報社




キネマ旬報1980年5月上旬号62-65ページ
『地球へ…』特集1
竹宮恵子インタビュー
●遺伝子の中に記憶は残る
インタビュアー:藤田尚
同席者:増山法恵(プロデュース・ディレクター)、ささやななえ
(図版に続いてテキスト抽出あり)




参考【竹宮惠子:地球へ…



『地球へ…』特集1
竹宮恵子インタビュー
●遺伝子の中に記憶は残る
インタビュアー:藤田尚
同席者:増山法恵(プロデュース・ディレクター)、ささやななえ



動いているん
だもの感動よ


「地球へ…」の原作者、竹宮恵子さんはマンガ家生活13年のベテラン。少女マンガ家と呼ばれることが多いが、その作品のもつスケールの大きさ、テーマの深さ、描くところのキャラクターの魅力などで、少女のみならず男性も含めた幅広い読者を獲得しています。

『マンガ少年』誌に連載された「地球へ…」ならびに『少女コミック』誌に連載中の「風と木の詩」により、本年度の小学館漫画賞を受賞。「竹宮恵子作品集」 第1期全13巻など、単行本も数多い。

マンガのみならずレコード制作も手掛けるなど意欲的な活動をなさっているが、今年は漫画賞と、この劇場アニメ化とが重なり、これまでにない忙しさとなってしまったとのこと。

アニメのプロモーションのためのツアーで仙台から帰ったばかりのところで、一晩で仕上げねばならぬ原稿と、翌朝はTVのモーニングショー出演というスケジュールにもかかわらず、深夜のインタビューに快く応じていただけました。

また、竹宮さんのプロデュース・ディレクターの増山法恵さんと、本誌「井草日記」でお馴染みの、ささやななえさんにも、竹宮さんの友人として同席いただきました。



藤田「地球へ…」のアニメーションフィルムはどの程度、ご覧になったんですか。

竹宮 映画館でやる3分間の予告篇ぐらいですね、私の見てるのは……。

藤田 動いているのを見た感じはどうでした。

竹宮 たんにソルジャーが顔を上げるシーンとか、トォニィがさっとふり向くシーンとか、そういうのを見ただけで、うっうっ感動じゃあとなっちゃうわ、やっぱり。てれくさいというか、やっぱり感動よ、動いてるんだもの。でも、今のアニメというのは動きが略されているでしょ。だから、それ見なれているとじれったくなっちゃうの、まともに動いてるのが……。 そんなに距離がないところを、キャラクターが近づいてくるのに、ゆっくり時間がかかるわけ。

藤田 じゃあ、マンガのコマ割りのテンポとは、だいぶ感じが変わっちゃうわけですね。

竹宮 そのへんはよくわからないけど、マンガのコマ割りというのは、パノラマ的に全部の場面が見られるでしょ。だけど映画の場合は時間で割らなきゃいけないんで、そのへんずいぶん印象が違うんじゃないかな。

藤田 アニメじゃなく、実写の特撮だったらどうなんでしょうね。

竹宮 うーん。やっぱりルーカスか誰かにやらせなきゃダメだと言ったりして、大金を使って。(笑)

増山 きたのよね、実写の依頼が。

竹宮 そくざにことわったけど。(笑)

増山 でも今回は、アニメで恩地さんの「地球へ…」をつくるからってうけたの。
参考【「地球へ…」恩地日出夫監督インタビュー

竹宮 最初はやるかやらないかで、ずいぶん悩んだよね。恩地さんてどういう人か知らなかったからだけど、会ってから安心しちゃった。

増山 監督さんもガンコだからね。

竹宮 うん。何を言っても変えないよ。出来たからには変えたくないと、かたいの。(笑)でも、そうでなきゃ創作者の値打ちがないしね。

増山 アニメと原作は考え方が違う。監督さんの考え方は、ずいぶんウェットね。

竹宮 そう、それは時代のせいだと思う。話してて結局、監督さんの世代の人っていうのは、ミュウか人間かというと人間のほうをとっちゃう。でも私たちの世代というのは、そうじゃないと思うでしょ。そのへんが違う。革新をどうして認めたくない世代と、自分たちはどっ ちなんだろうという世代とあるんじゃないかな。

藤田 どちらかというと……。

ささや ミュウにすーっと入っていけるんだけどね。

竹宮 私もね、コンテが全部出来上がって、読んで、ちょっと待ってこれはおかしい、ということでね、監督さんと1時間、いやもっと、2時間くらい私がベラベラと一方的にまくしたてて、ようやくわかってもらったのよね。なるほど、そこが違うんだというところをね。変えるとなると、セリフとか微妙に違ってくるから今から直すのは無理だと、そのまま一応ウェットな方向でしてみるということになったわけ。恩地さんは、それを言われてイヤとかいうんじゃなくてすごくいい人だから平気。本当はね、そういう人だから楽という気がする。私のほうに合わせようとするわけでもないし、そういう感じがちょうどいいのね。

増山 やっぱり自分の「地球へ…」を作ろうとしている。



夢の世界から
「地球へ…」


竹宮 東映が「地球へ…」をアニメにとりあげたという謎がとけないのよね、なんでやったんでしょうと。(笑)東映動画は、ファンがアンケートで1番に出したから迷いもなくやったと言ってたけど。これが一部のSFマニアじゃなくて、みんなに読めるというのは、そういう時代になったということよね。イベントに来ていた小学生は、読んでみたけど難しいって言ってたわね。でも映画は見ますと、しっかりと言ってた。(笑)

藤田「地球へ…」は、最初の発想が夢からだそうですが。

竹宮 えーとね、第1部の話は夢から出来ているわけ。成人検査の風景が夢に出てきて、ジョミーが私だったのか、私がジョミーを見ていたのか、そのへんはわからないけれど、あのコースターに乗ってる感じとか、そのへんはよく覚えてて。ナキネズミを檻から出すところは、テレパシーじゃなく、しっかり私の意志で開けて出すというのだったんだけど、すごくはっきりのこっていてね。それをやったら罰っせられるとか、いろいろわかったけどやっちゃうわけ。

藤田 “成人検査”というのも、そういう内容で?

竹宮 成人検査みたいな意味はなかったけど、すごくファンタジックだったのよ。それに理屈をつけたのが成人検査になったわけ。

ささや そこから発想するなんてすごいなあ。でも後半はぜんぜん夢になかったんでしょ。

竹宮 ないない。 (笑)

増山 だって、連載は3回で終わるつもりだったからね。

竹宮 第1部だけでいいと思っていたから、成り行きは知らん。(笑)だから2部をせっつかれた時は死ぬ思いだった(笑)

藤田 何歳位に読者対象をおいて描かれたんですか。

竹宮 いえ、決めてないです。編集部になんか問題ありますかってきいたら、何もないです、好きなようにやってくださいというから、ハイハイと好きなように描いてみたら、やって2回とたたないうちに、ぱっと人気が出て、だから連載がのびてみたいな。初めて描く少年マンガでもあったし、まじめに描くSFでもあったの。「ジルベスターの星から」とかは、少女を意識したり、ファンタスティックな部分が多いでしょう。「地球へ…」にはまったくそれがないから、そういう意味でははじめてのSF。もっともっとハードなものが好きなのね。で、映画のシナリオ作る時に監督さんと話をして、ちょっと甘すぎるからこうして渋くしたほうが……と言うでしょ、監督さんはいつもスポンサーに辛すぎるからと言われるのに、もっと辛くしろと言われるのははじめてだと。(笑)

藤田 全体の構想がまとまったのは。

竹宮 それは第3部を描きはじめてから。結着を考えて。(笑)

ささや それはすごい。

藤田 最初から構想があって、第1部が起、第2部が承、第3部が転、第4部が結になるのかなと思ってました。

竹宮 そうね、だいたいそんな設定はしてたけど、結局話っていえるようになったのは3部になってから。とにかく地球側の設定さえ描けばいいと思ってたから。本当はジョミーも描くつもりだったんだけどまったく出る余地がなかった。どんどんキースしか描けなくなったのよね。フィシスも、なんで盲目になったかというのはあとからね。アニメ化の話がなければ、まだ終わらなかったわ。(笑)

ささや 逆に言えば、アニメ化は罪なわけね、終わらせてしまって。

藤田「地球へ…」というタイトルはどういう風に発想したのですか。

竹宮 もうそれしかないわよねって感じで。(笑)

藤田 他に候補は?

竹宮 何もなかったよね。増山さんと相談したんだけど、ふたことみこと話して、「地球へ」は? って、じゃ最後にテンテンテンをつけようと。(笑) でも結局自分でもタイトルにいろいろ影響されつつ描いているなと思うのね、ときどき。この作品はこういうタイトルだからなって。うーん、描く気分の総称って感じね、タイトル名は。



生存をかけた
新・旧の対立


竹宮 企画の田宮武さんが面白いことを言っていたの。このアニメには善悪がなくて、勧善懲悪じゃないと。で、何が悪者なのかわからないけど、もしかしたら、「地球へ…」の時代の前の我々の責任じゃないかと。(笑)

藤田 TVアニメのロボットものや、少年マンガは基本的に正義と悪がはっきりしてますね。

竹宮 それと「あしたのジョー」みたいないき方もあるんだけどね。善悪なしで、だけど敵というかライバルっていうやり方はあるんだけれど、スポーツじゃないから。

藤田 生存をかけた新旧の対立ですね。

竹宮 うんそう。それが珍しい珍しいって、ずいぶん言われたけどね。

増山 だけど、あなたの作品はいつもそうでしょ。

竹宮 そう。私はいつも人間のことでどっちがいいか悪いか結着はつけられない。だから「鉄人28号」と「鉄腕アトム」とどっちが好きと言われるとアトム好きで、鉄人なんかは私にとってはおよびもつかないのよね。完璧な勧善懲悪が面白いっていうでしょ、鉄人が好きな人は。単純発想にみえちゃうというか、それが楽しいと言われちゃうと、ああわからんなあという感じ。(笑)

藤田「スター・ウォーズ」にはダース・ベイダーなんていますけど。

竹宮 あれはね、どっちかっていうと設定が面白かったのね。何ていうのかな勧善懲悪の部分じゃなくて、スペース・スペクタクルの部分じゃなくて。C-3POとR2-D2という形のロボットが人間のまわりをいっしょに右往左往しててね。悪の場合にも同じパターンのロボットがいたみたいで、ぜんぜん違うんじゃないのね、おんなじ世界だから。タイプが何種類かにわけられてるわけ。だって、R2-D2とC-3POがコンピューターから情報をひきだすのに、どうやってするんだろうと見ていると、ただ太いコードのような物をヒョイとつなげるだけなのね。その高さはきまっているわけね。そのへんがすごく面白かった。

藤田 そういう見方は初めてききました。言われてみれば確かに、機械の規格が同じですね。JISマークがついているのかな。(笑)

竹宮 Xファイターのうしろにもポコッとコンピューターが一機ずつとにかく入れるようになっている。ストーリーだけだったら、そんなに楽しまなかったかもしれないけど、そういうところが面白い。



テレパシーを
持ちたいなあ


藤田 SFには便宜的に宇宙テーマとか未来テーマとか破滅テーマとかいろいろジャンルがありますが、お好きなのは。

竹宮 うーん、そうだなあ、一番好きなのはミュータント・テーマなのね。それとあとはフランク・ハーバートの「デューン」のようなものね。ちょっと王国的な話というか。

藤田 ミュータントの超能力? 新人類って感じのところですか。

竹宮 そういう感じで。人間を、人間自身で作り変えるって話が好きなのね。「デューン」の最初に、ポールが眠ってて起きるシーンがあるのよね。目が覚めて、しばらくのあいだ寝床にいながら、前日の疲れを自分の意志ですみずみまでとっていくの。おお、これでなくちゃいかんという。(笑) そこですでに好きになっちゃったのね、話が。そういう意味で人間って自分たちを作り変えていかなくちゃという気持ちがあって、新人類の話とかミュータントの話ってのは好きなんだけど。

藤田 石森章太郎さんの「ミュータント・サブ」を小さいころ読んで超能力がほしいと思ったんですが……。

竹宮 そうねえ、でも超能力が自分にあるとは思えなかったしね。

藤田 訓練なんてしませんでした?

竹宮 ぜんぜんしなかった。(笑) ムダな努力だと思ったから。

藤田 僕はひととおりはやりました。(笑) で、超能力では何があったらいいと思いますか。

竹宮 私はもう完璧なまでにテレパシーなのね。他のものはなんにもなくていいからテレパシーがほしい。

藤田 それは相手の考えが読めるからですか、それとも互いに通じあえるからですか。

竹宮 お互いに通じあうってことね。イメージしたのをそのまま伝えたいと思う時に伝えるの。たとえば言葉ひとつにしても、それぞれにもってる意味が違うでしょ。それがなしになる。伝えたい時にその意味だけが100%伝わるわけ。それが伝わればいいといつも思ってるか ら。誤解がなくなるじゃない。主義の違いはあってもいいけど誤解はイヤだから。

藤田 でも、自分の考えが全部伝わって、そのために嫌われるということだって。(笑)

竹宮 それは知らん、それは。(笑) そういう風にまともに伝わるようになればそれぞれだって考えるじゃない、まともにしておかなくちゃとうか、いい人間にしておかなくちゃっていう自分自身を錬磨するところが出てくるでしょ。そういうのがあってほしいと思うから。(笑)

藤田 相手の心は読みたいけど、自分のはあまり読まれたくないなあ。

竹宮 私は読まれたい。誤解されてることが多いから。言葉で誤解されるほうが多いから。まちがいなく言おうと思うとストレートに言っちゃうわけ。そうするとまちがいなく伝わりすぎて。(笑) すっかり考えを読み取ってくれるほうがいいわね。



アニメでみた
い竹宮作品群


藤田 アニメはもともとお好きだったんですか。

竹宮 ええ、小さいころ、高校以前までは見てたんですね。東映動画の最盛期。長編アニメがすごく好きだったから。

ささや それと、ディズニー?

竹宮 そうねえ、ディズニーはもう終わりごろだったよねえ。東映動画のほうが印象は強いという気がするな。やっぱり、ディズニーのバタくささというのは、どっかたえられないところがある。東映動画ので一番印象強かったのは「西遊記」なのよね。ディズニーでは「ピーターパン」。共通点というのは両方とも主人公がきかん坊だという、(笑) それが好きでね、もう理想ねえと見ていた。(笑) いまTVで「ニルスのふしぎな旅」を一所懸命見ているんだけど、エルスがどんどんいい子になる話なの。本質的に変わっていくという。それがどうなることやら。なくしてほしくないなあと見ている。

藤田「地球へ…」以前に、自作でアニメになってほしいと思った作品は。

竹宮 うん、一番最初にアニメになってほしいなあと思ったのは、「空が好き!」だったのね。これはとにかく歌のシーンが多いので、踊ってくれなきゃ話にならないということがあって。だから自分で動かしてみたいと思ったのはこれがはじめてね。TVアニメに「ファラオ の墓」が企画の段階であげられたとか、そんな話はちらほらしてたんだけど、結局GOは出なかったものばっかし。私はわりとね、SF、それもおふざけSFのね、「ブラボー・ラ・ネッシー」とか短い話、ああいうのをTVのスペシャルアニメの1時間のとかで作ったら面白いん じゃないかなあと思うんだけど。

藤田 宇宙旅行をしたいと思いますか。

竹宮 うん、それはしたい。早くしたい。飛行機に乗るのも好きだし。(笑) 宇宙飛行士になりたいとは思わなくて、乗客になりたいな。

藤田 どのへんを見たいですか。

竹宮 このまえも聞かれたんだけど。木星のもっと外側の冥王星とか、あっちのほうに行くと気体が凍ってるんだって。透明な球体の芯が土なわけ。それで気体が凍ってるというから、きれいだなあと、それを見たいと思ってるんだけどね。でもそこまで行くにはワープ航法でもない限りね。でなきゃ帰って来ない旅でないとありえない。今だったら何世代もかけないと行けないんじゃない。
それと、私はわりと遺伝子の中に記憶が残るのって信じてるのよね。私が見てもいないのに、母親がすごした少女時代の風景とかそういうのをなつかしがるというところがあるわけ。こういうところですごしたんだよ、という写真を見せられたりするとなつかしくて行きたいわけね。彼女は満州だったんだけど、満州の風景を見るとああ行きたいなと思っちゃう。なんとなくそういうのは血の中であるって気がする。そういうのも「地球へ…」の中には入ってると思うんだけど。



キネマ旬報1980年5月上旬号
参考【竹宮惠子:地球へ…

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