5ちゃんねる【萩尾望都】大泉スレ【竹宮惠子】に関する資料まとめサイト

【竹宮惠子・増山法恵トークショー】
『ヴォイス・オブ・エンジェルズ』DVD発売記念(2008年10月3日発売)のイベントとして行われたトークショーレポート

日時:2008年10月20日
場所:​渋谷アップリンクファクトリー
http://www.webdice.jp/dice/detail/1046/

有限会社アップリンク
プレスリリース
https://www.value-press.com/pressrelease/29732


少年合唱の魅力
「花の24年組」として知られる漫画家・竹宮惠子氏、増山法恵氏トークショー

1970年代の少女漫画界に文学的な切り口と複雑な画面構成を用い、新風を吹き込んだ「花の24年組」。その一員である、漫画家の竹宮惠子氏と大泉サロンの主宰者である増山法恵氏によるトークショーが、少年合唱団を題材にした『ヴォイス・オブ・エンジェルズ ― 少年合唱団の天使たち』のDVD発売記念イベントにて行われた。

少年合唱との出会い

増山: この『ヴォイス・オブ・エンジェルズ』は制作されたのが10年前の作品で、私はすでに個人輸入で海外版を持っていました。ですから海外版を持っている方も多いのではないでしょうか。英語版、フランス語版、ドイツ語版等出ていますが、世界的に少年合唱団ファンの間では、作品としての評価が高く、少年合唱ファンの必須アイテムのようなものになっています。日本版が出るのは大変意義深いことだと思います。

竹宮: 私はこれを見て、ファンになった当時、合唱団を描こうとしていた時に、この映像が欲しかったと思いました(笑)。この映像にあるものを見たくて実際海外に行ったんですよ。もともと、漫画の繋がりで私たちは知り合ったんですけどお互い少年合唱団が好きなんてことは知らなかったんです。

増山: ある時、彼女がウィーン少年合唱団のレコードを持っているのを知って。「え!すきなの?」って。

竹宮: 私は徳島生まれなんですが、ほとんど情報の無い状態でその一枚のレコードから少年合唱ファンになったんです。父親が楽器店をやっていて、中学に上がるくらいのクリスマスプレゼントとして父から貰ったんです。ジャケットがピノキオと女の子のファンタジックなもので、なるほどクリスマスな感じなんですけど。実際、聞いてみたら合唱曲で(笑)。当時分かったのは、少年が歌ってるということだけ。少年合唱団というものがあることも知らない状態で、そのレコードにはまってしまたんです。何故、自分がそのレコードにで出会ったのか分からないけど、自分にとってとても大切なものだということだけは分かって。その少年の声の中にある何かを私は感じていたんですね。
私は、実は音楽には疎いんですが、上京する時にもそのレコードだけは持ってきたんです。私にとって「少年合唱が好き」というのは、とても珍しくて変わったことだったので、増山さんと少年合唱について話をしたときにとても驚いたんです。

増山: まさか、そんな共通点で仲良くなるとは思わなかったです(笑)。 人々は自分の美意識世界を、絵画や映画・文学などいろいろなジャンルの中から抽出して「これが自分にとって一番美しい!」と思う源泉をみつけると思うんです。私の「美意識の頂点に存在するもの」が少年合唱だったんです。もう聖域と言っても過言ではないです。

竹宮: 私もそうなんですよね。私の美意識の何かに引っかかるものがその少年合唱のレコードにあると思ったんですよね。

「少年」じゃないと自分を乗せきれないところがあった

増山: 私が生涯で全身の血が逆流するくらい嬉しかったのは一度だけで、竹宮惠子が小学館漫画賞を取った時なんです。竹宮の作品はそれまでに何度も何度も最終選考にまで残るんですけど、当時少女漫画家が受賞するのは非常に難しかったんです。なんとか、その暗黙のルールみたいなものをひっくり返してやりたくて。

竹宮: 『風と木の詩』と『地球へ…』両方で賞をとったんですけど、『風と木の詩』は非常に特殊な作品なので、男性の審査員の方は…賞をあげたくないと(笑)。なので、ちょうどその時あった『地球へ…』をくっつけて受賞と。前年度受賞できなかったので、私は心の中で『風と木の詩』が取れないならいらないよって思っていて(笑)。その時、漫画を描くのが物凄く楽しくなってる時だったので賞に関心を払うことすら嫌になってしまって。そうこうしてたら、受賞したって聞いて「は?」って。

増山: こんなふうに私と彼女は、何に対しても温度差が各所にありまして。彼女とはあらゆるところで正反対なんですよ。でも、違っていたから上手くやれたのかなと。あまり好みが似ていると、友人なら最高なんですけど、一緒に仕事をすると近親憎悪を起こす危険があります。持っている世界が正反対だから長く仕事を続けることが出来たと思います。

竹宮: だから足りないところを補う形で、あなたから聞いたことにビジュアルを与えるってことが出来たのではないかと思います。

増山: 昔は意見が対立するとそれこそ取っ組み合いの喧嘩もして(笑)。私はジルベール派で彼女はセルジュ派です(笑)。

竹宮: あの時、男の子を主人公に少女漫画を描くなんて、誰も認めてくれないし、あなたに言われなければ勇気を出して描かなかったんですよ。

増山: 彼女はその当時、懸命に少女漫画を描こうと努力していて。彼女はもともと少年漫画で育った人で。出来れば、少年漫画でデビューしたいくらいだったんです。

竹宮: 持ってる漫画的力が非常に少年漫画的であったというのもあるんですけど。「少年」に対する関心というのが普通の感覚と違って、「少年」じゃないと自分を乗せきれないところがあったんですよ。

増山: でも最初は、自分でも気がついてなかったでしょう。彼女の当時書いていた少女漫画がえらくつまらなくて(笑)。彼女が描く主人公の女の子にまるで魅力がなくて、これではファンを獲得出来ないと思ってました。でも、その脇に出てくる少年がいやに美しくて活気に満ちているんで。「少年のほうがずっと魅力がある。あなた、少年を主人公に漫画描きなさい!」って言いました。

竹宮: それで気がついたというか。それだったら素直に頑張れるところがあって。描き表すべき何かが内側に無いと上っ面の物語になっちゃうので、描き続けることは結構難しい。描きたいことがはっきり無いと。当時はそんなことにまで頭回っていませんでしたけど、今はそう思います。

増山: 私自身、当時「少女漫画の主人公は何で必ず女の子なの?」と常々不思議におもってました。「女の子は男の子が好きなのが一般的でしょ。少年を主人公にしたっていいじっゃない」と。竹宮がこんなに魅力的な少年を描けるなら、絶対に読者は男の子を主人公にしたほうが喜ぶと確信を持っていたんです。そして見事に描いてくれましたね。私の判断は間違っていなかったと思いました。

竹宮: 抵抗はほとんど趣味のように大好きだったので(笑)。その頃、少女漫画家は結構抵抗していたと思うんですけど。気の強い女の子が出てくるとかっていうそのくらいで、外見はやっぱり「可愛らしい女の子」だったんです。そこで、「少年」を主人公にしてしまうことでそこからの脱出を決定的にした感はありましたよね。

私と竹宮と大泉サロンの作家仲間四人でヨーロッパに旅行に行ったりしました

増山: でも、あの頃はほんとに外国について勉強しましたよね。映画を見て、洋書を集めて、結局最後は私と竹宮と大泉サロンの作家仲間四人でヨーロッパに旅行に行ったりしました。

竹宮: もちろん、この人の目的は日本に売っていない少年合唱のレコード集めで(笑)。私は、どの合唱団がどうだと言われてもあまり分からないので、レコードショップで待ってる感じで。むしろ目的地にどうやったら行けるかを鉄道の路線図を見ながら決める係りでした。

増山: そうそう私も最初知らなかったんですけど、彼女、実は鉄道おたくで(笑)。私が仕事でイギリスに行くとき、一人だと不安なので竹宮に付いて来てもらったんですけど、その時彼女が出した条件が「ヨークに行きたい」だったんです。それは、ヨークに世界一の鉄道博物館があるからで。

竹宮: おたくってほどじゃないですけど。でも、旅行のときは出来るだけ有名なラインを選んでね(笑)。ヨークの鉄道博物館には素晴らしい電車が沢山あって、しかも動いてる状態で保存されているんですよ。しかし、最初の渡欧は英語もしゃべれないのによく行ったよね。絵を描いて説明したりして。

増山: 私以外の3人は漫画家ですから絵は上手いわけです。でも3人とも目の付け所がやっぱり変なんですよ。「扉のドアノブの冷たさはこんななんだ」とか、薔薇の花を囲んで「これが本物の薔薇なんだね。本物の薔薇描いてたのは水野英子先生だけだね」とか言ってたり。写真も石畳のアップを撮ってたり(笑)。

竹宮: 実際に本物の少年合唱団の練習を見れたりするのはもっと後なんですよね。

増山: ウィーン少年合唱団の漫画(「ウィーン幻想」白泉社刊)を描こうという時、ウィーン少年合唱団は著作権について非常に厳しいところなので、もういっそ直接現地に行って、団長さんから許可をとってしまおう、ということになって。結局、いろいろな方から紹介状を書いてもらって、アウガルテン宮殿(ウィーン少年合唱団の学校)、まで行き、団長さんから「自由になんでも描いていいですと」と正式に許可を取ったんですよね。

竹宮: この作品が再録されていないのは、そういう関係なんですよね。もう一度、再録するときは、またウィーンまで行って直接許可を取らないといけないと思ってます。

Menu

メニューサンプル1

管理人/副管理人のみ編集できます