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【竹宮惠子「変奏曲(1980年2月発行13版)」あとがき】

「変奏曲(1980年2月発行13版)」あとがきで竹宮恵子はこの作品について「七つ八つの小学生時代から、ヴィレンツ物語は、私の心に広がり始めました」「物語が完成したのは、二十歳をわずかに越した頃と記憶しております」「私の成長とあまりにも密着して育ったこの物語」「私の夢空間を漫画化した」と、自作であることを繰り返し語っている

「変奏曲」の初出は別冊少女コミック1976年3月号
原作者名は併記されておらず竹宮恵子作品として発表している

初出から22年後の1988年に出版されたペーパームーンコミックス版「変奏曲」あとがきにおいて竹宮惠子は初めて「この『変奏曲シリーズ』は原作者名つきなのです」と、原作者を明かしている

詳しくは
「変奏曲」あとがき2種:1980年・1988年
「ウィーン協奏曲」と「ノルディスカ奏鳴曲」の嘘実
また、1997年には音楽漫画共作集「ウィーン協奏曲」(創美社)にて以下の対談が掲載されている
竹宮惠子・増山のりえ:スペシャル対談



【竹宮惠子「変奏曲(1980年2月発行13版)」あとがき】
資料提供:https://medaka.5ch.net/test/read.cgi/csaloon/16290...





ヴィレンツより愛をこめて
☆誕生のいきさつーー再構成についての”いいわけ”ーーそして第二部へ

「ヴィレンツ物語」と「風と木の詩」。この二つの物語を兄弟にたとえるならば、「ヴィレンツ物語」は、年うえの兄であります。はるか、七つ八つの小学生時代から、ヴィレンツ物語は、私の心に広がり始めました。ウォルフという主人公が形を成したのは十五・十六の頃。対抗するエドアルドが出現したのは、十八・十九の頃。物語が完成したのは、二十歳をわずかに越した頃と記憶しております。少女期の私にとって、ヴィレンツこそこの世に存在せぬ理想郷。天才少年ウォルフは、あこがれてやまぬ“夢の王子様”でありました。
 私の成長とあまりにも密着して育ったこの物語を、漫画化しようと思い立った時、その奔放に伸びた枝葉のどこを刈り取るべきか、とても悩みました。
 まず架空都市ヴィレンツを、地上に降ろす作業が大変で、ドイツ、イギリス、フランス、どこを想像してもピンときません。ようよう、音楽都市ウィーンの郊外、メエトリンク市をモデルと設定すると、おかしなことに、ヴィレンツという街が、最初からオーストリアの一都市であったかのように、物語が自然と息づき始めました。
 「ヴィレンツ物語」(一九七四年花とゆめ九月号)は、この長い長い物語のダイジェスト版として世に問うた作品ですが、予想を超える好評にすっかり気を良くし、全編を大長編に仕立てるつもりで「変奏曲」をスタートさせました。しかしながら、「マニアっぽい作品は困る。」という編集部の方針で、連載は三回でチョン。その後、「アンダルシア恋歌」「皇帝円舞曲」と、読み切りの形で続編を発表しましたが、そのたびにエピソードが重複するのにはまいりました。
 今回、ヴィレンツ・シリーズを一冊の本にまとめるのを機に、物語を一本化させようと努力してみましたが、いかがなものでしょうか。本を手にした方は、数編が合体していることに驚かれ、また多少の抵抗を覚えるかもしれませんが、作者としては最初からこうしたかったのだ、という意図をくみ取っていただければ幸いです。
 ヴィレンツ創作過程の最後に登場した人物ホルバート・メチェック氏は、今では主人公達をさし置いて、多大の人気を獲得しつつあります。「椿館の三悪人」は、そんな彼を主人公に軽いタッチで描いてみました。作品の冒頭に出てくるIch leidenschaftlich liebe dichについて、文法的に間違っている、との指摘をよく受けますが、これは「熱烈にあなたを愛す」をちょっとイキに言っているためで、“文法的に正しい”文体ですとじつに野暮ったい言い方となり、シャレッ気がふきとんでしまうのです。
 ウォルフの死とともに、ヴィレンツ物語の第一部が終了し、現在は彼らの息子達を主人公とした第二部の創作にとりかかっております。第一部完成まで十数年かかりましたので、第二部が世に出るのはいつのことやら。
 作品化する、しないは別として、ヴィレンツは、空気のように、いつも私をとりまいております。仕事に疲れた時などふと旅立てば、もう私は長年のヴィレンツ市民。見なれた街角をぬけ、木立に囲まれたユング・フェルンを眺め、エドナンとウォルフの華麗な協演を心ゆくまで楽しむのです。
 私の夢空間を漫画化したことによって、たくさんの方々が、私に負けぬ熱意でウォルフやエドナンを愛してくださることに、心から喜びを感じます。
 どうかいつまでも、彼らを皆様の良き友として、心の中に生き続けさせてください。

初秋のヴィレンツ市にて
竹宮恵子

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