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【インタビュー:伊東愛子・たらさわみち】
ぱふ1982年8-9号「特集竹宮恵子part2」

ぱふ1982年8-9号「特集竹宮恵子part2」
発行日:1982年08月01日
出版社:雑草社


資料提供
https://medaka.5ch.net/test/read.cgi/gcomic/163189...


ケーコタンがんばって!
伊東愛子(漫画家)
たらさわみち(漫画家)
(画像2枚に続いてテキスト抽出あり)





ケーコタンがんばって!
伊東愛子(漫画家)
たらさわみち(漫画家)

ーー竹宮さんとの出会いはいつ頃、どういうきっかけで?

伊東 私はファンレターをバーッと出して、で、アシスタントに呼ばれたんですけど。

たらさわ 私は最初萩尾先生の所、大泉を尋ねて、その時竹宮先生が一緒でそこで知り合ったんですね。高校生の時です。

ーーお二人はそこで知り合った?

たらさわ いや、微妙にすれ違ってたんですね。

伊東 そうなの、名前だけはお互い聞いてたんだけどね。当時はみんないっもいつも落書きしてたね。偉かったね。

たらさわ 今、私は仕事以外の絵ってあんまり描かないんだけれど、あの当時はみんなね。

伊東 仕事以外にもね。仕事が終るでしょ。さあ、お絵描きタイムになっちゃうのね。

たらさわ 何というパワー

ーー竹宮さんもやはり描いてらした?

伊東 ええ、精力的でした。仕事が終ってもカラー描いてた、シャカシャカって。

ーー伊東さんはメシストだったそうですが、どんな料理を作ってました?

伊東 初めて行った日は、フランスパン買っていって野菜いためをサンドしたのとポタージュスープのドロドロのやつ。みなさんネームをやってらして、食欲どころじゃないから、ドロドロのスープを残されてね。

ーー竹宮さんに初めてお会いした時の印象はどうでしたか?

たらさわ 私は三年上なわけですよね竹宮先生っていうのは。だけど小柄だ ったし、若く見えたっていったら失礼 だけど、この人が竹宮先生?って。真っ赤なスモック着てたのね。少女って感じの人だった。

伊東 私は、バス停まで迎えに来て下さったんですけど、ほんとにきゃしゃだなあって思って。竹宮先生っていうと、どうしても増山さん抜きには考えられないのね。「COM」の頃は本当に竹宮恵子元気一杯って感じですよね。で、プロになってからすごく描きたいものとか色々あるだろうなって、わりとあがいている感じを作品から受けるの。そのケーコタンの中のものを引っぱり出したのが、増山のりえさんだと思うんですよ。竹宮先生はよく泣いてたの、できないわ、とか言って。増山さんがそういうのをひっぱってきたみたいなところがあるから。イラスト一枚描くのにも大ゲンカでした。増山さんの目にさらされると、分らなかった面っていうのがすごくよく分ってくるというか。また彼女は、人に自信をつけさせてくれるもって行き方が、すごく上手いんですよね。ありがたいなーといつも思っちゃう。

ーー竹宮さんはタフだそうですね。

たらさわ「ノエル」の頃かな。あの時一日で三十何枚描いたとか。あとね、プリンセスの「アンダルシア恋歌」、あれも一日で描いたの。その時にはもう寝てないんです、全然。あれにはびっくりしちゃった。

伊東 けど、倒れちゃった時があって、粕谷紀子さんとオバタマ(花郁悠紀子さん)と私もいたのかな。「風と木の 詩」のアスランとパイヴァの時。その時はベッドに横になりながら上にテーブルを出して、描いてるうちにどんどん元気になるの(笑)。描き始めちゃうと病気よりも描こうという気分の方が勝ってたみたいね。

たらさわ 病気で気絶したのよね。気絶するとかっこいいっていうじゃない、でも竹宮先生はあんな気持ち悪いものはないって。そうか現実はこんなもんか。それをまんがでいかに美しく描くかって(笑)。あの時は落ちるかどうかって瀬戸際の時だったのね。それで、三、四人呼んでみんなベッドのまわりを囲んで。

伊東 オバタマがガルジェレ候爵を描いていたんだょね。

たらさわ 私、アスランのお父さんを描いた。

伊東 私、アスランのシルエット。

たらさわ 担当してね。もう、似顔絵大会。

伊東 でも画面の質は落ちないのね。

たらさわ その時、竹宮先生は画風っていうか、自分のものを描く際にーーロングの人物を普通任せちゃうじゃない、アップを自分で描いてーーそうじゃなくって、逆だったのね。ロングの人物の方はその人の作風っていうのが出ちゃうから、ロングは自分で描く。アップの方は真似しやすいから、アップはそれぞれにまかせていくっていう。

伊東 あの立たせた時の重心の入れ方っていうのが、あの先生独特だものね。

ーー面白いエピソードは?

伊東 あの人本人はあまり面白くないのね(笑)。まわりにいる人の方が面白い。

たらさわ 面白いっていうんじゃないですけど、原稿〆切りギリギリになって担当さんがつめてますよね。担当さんが左うしろに立ってたのね。そしたら「左側には立たないで下さい。」って言ったの、先生が。気になるからって。手元が描いてると見られるわけでしょ。実際に描いてる手元っていうのは、左側から見えるんだろうね。

伊東 まんが以外にも、一般に器用だから。おせち料理作ったり、自分で洋服直したり。

たらさわ お料理が上手いのよね。すごく忙しい時に呼ばれたのに、先生が夜作りに立ったことがあって。

伊東 おせち料理も見事だったですよ。あらどこで買って来たのって聞いたら作ったの、って。あんまりきれいなので食べないでカビが生えて。

ーー竹宮さんの昔と今の違いは?

伊東 今は大変自信を感じる。自分のやりたいことっていうものに対してね。以前増山さんがつきっきりだったころには感じられなかったように思う。

たらさわ 結局相談事があった場合、竹宮先生じゃなくて増山さんの方に相談しちゃうんですね。

伊東 昔から、描き手としての彼女の持ってた悩みなんかはハタから見てた増山さんの方が分るみたいで。(増山さんが) つきっきりでネームを見たり、構図ひとつにしても、竹宮恵子はこういうのよりこういうのを描く、これが本当のあなたなんだって言うわけです。半ばできあがっていても、やり直しするわけです。

たらさわ それは今でもやってるんですね。仕事でギリギリであっても。

伊東 そうなの。ネームをみんな捨てちゃうの。

たらさわ 一日つぶしてやり直しのディスカッションして。

伊東 以前のケーコタンっていう人の中に散っていたものーーたとえばカラー1枚とっても、私はすごいマニアだったから「ここはどうしてこんな色にぬるのかなあ」って、アンバランスを感じてたのねーーそれが増山さんによってどんどん結晶してされていった。「変奏曲」を描いた時に至っては、もう文句なしですね。

ーー今後の竹宮さんに期待することは。

伊東 もっとアクティブになってほしい気がするなあ。でもまんがはやっぱり読みたいしなあ。色んなことを体験してほしいなって思います。それが全部作品に出てくる人だからね。ここ二、三年は無理としても、また一緒に旅行に行こうね。

たらさわ 期待...そうですね、元気で頑張ってほしい。

ーー「風と木の詩」の構想を聞いた時はどうでしたか?

たらさわ 私は構想を聞いた記憶ってないんですよね。ただそういう話があるらしいって。

伊東 メシストの図々しさでね、スケッチブックを何枚か見せてもらって。なんだかびっくりしちゃって、電車に乗ってもその図が宙を舞ったりして(笑)。びっくりしました、でもすてきだった。描いてほしいと思った。とにかく描きたくて描きたくて、というものを描いたから、エネルギーが爆発したようなところがあった。

たらさわ 連載した当初編集長が青ざめてね、教育委員会が何か言ってきたとか。でも竹宮先生は譲らなかったね。

伊東 本当に描き手がこれが正しいって描く時は、人の意見は必要ないんだよね。結果としてどうなるかであって、やってる最中にしのごの言われるのは 一番いやだと思う。

ーー竹宮さんはきれいでモテたそうですね。

伊東 あの人モテるもんね。結婚したかった人一杯いたみたい。

たらさわ 竹宮先生が「恋愛の方がまんがより面白ければ恋愛してました」って。そうじゃないからまんが描いてたって(笑)。なるほどと思っちゃったもの。

伊東 結局のめり込める仕事があるっていうこと。愛情っていうのは人間だけに向かうものじゃないと思うの。好きなものがないっていう方が、よほど問題だと思うのね。のめり込めるものがあれば、そこから世界は開けていくもんね。本当に好きなものがあれば人間にも目覚めていくものだと思うし。 私は最初は違うと思ってたのね、自分はさっさと恋愛しちゃったから、やっぱりしたことある人とない人って、色々考えてたの。ところが結局まわりの友だちとか色々見てきてね、ああ関係ないんだなあって思いました。りっぱな人はりっぱになって、何をしていようといまいと。分ろうとしている人は、 分っていくし。

ーー伊東さんやたらさわさんの作品について、何か竹宮さんがおっしゃったことはありますか?

たらさわ あんまり無理言わない。

伊東 そういうの聞いたことないや。

たらさわ むしろね昔、まんがを描かない人に向かって描かないのかなって言ってたことがあります。作品に関してじゃなくて、まんがを描く描かないって時点でね。とにかく描いててほしいみたいな。一応それぞれ本人が、ある所で納得して作品ができあがってるわけだから、それに関して何だかんだいうのはね。

伊東 そうなのね。やっぱり自分で暗中模索して五感をフルに働かせてやっていくほかないのよね、ほんとに。先生のまんがに対する姿勢とか見せつけられているから。

たらさわ もう、描き手同志がお互いに苦労知ってるからね。

伊東 ンダンダ シビアーな世界なのじゃ! とにもかくにも「ケーコタンがんばって」と私は言いたい!! (オトーサンガンバッテの音で)