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【竹宮「ファラオの墓」はデビュー前の習作】

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竹宮「本作がもともとデビュー前の習作であり、それが編集者の目に留まり連載作品に発展した
参考項目【竹宮恵子:ライフヒストリー 検証】→「テレビランド増刊イラストアルバム5 竹宮恵子の世界」45ページ



うちの本棚 竹宮恵子2
猫目ユウ
発売日:2017年07月27日
形式:Kindle版
ファイルサイズ:2586 KB

*本書は「おたくま経済新聞」連載のマンガ紹介コラム『うちの本棚』から、竹宮恵子の単行本を取り上げた記事を集めた第2巻。


小学館の「竹宮恵子作品集」、最後を飾るのは代表作の『ファラオの墓』だ。「フラワーコミックス」版全8巻を作品集では全5巻に編集している。古代エジプトを舞台にした壮大な歴史物語で、質・量ともに代表作と呼ぶにふさわしい作品だ。
5巻(註:プチコミックス竹宮恵子作品集13)に収録された部分の「こぼれ話」(初出時には広告スペースだったと思われる余白に作者が手書きした解説)には、本作がもともとデビュー前の習作であり、それが編集者の目に留まり連載作品に発展したとある。



プチコミックス竹宮恵子作品集13:84ページ
☆『ファラオの墓』こぼれ話1

昔、まだ比較的“自分の時間”を持てた頃、雑誌に載せることとは全く無関係に、自分の楽しみのため、あるいは友人を喜ばせるために、いろいろと作品を描いていましが、「ファラオの墓」も、そんな作品のひとつでした。
たまたまその未完成の原稿が、編集者の目にとまり、世に出ることになったのです。
なにぶん気ままに描いていたものですから、原本は奇想天外天衣無縫、舞台も「地球上のどこか」というありさまで、連載決定後、急遽、舞台をエジプトに設定しました。おかげでやたらとエジプト関係の本を読むはめにおちいりましたが、本音をはけば気ままに描いていた時のほうが楽しく創れました。
以上のような理由から古代エジプトに、スネフェルやサリオキスのごとき金髪に青い目の少年たちが活躍することとなりましたが、実際のエジプト人は、チョコレート色の肌に、黒眼、黒髪です。

『ファラオの墓』こぼれ話:全文はこちら→【『ファラオの墓』こぼれ話:竹宮恵子作品集13



「ファラオの墓」が生まれた経緯についての記述


「少年の名はジルベール」小学館文庫(2019年)


193ページ
『週刊少女コミック』の新しい担当Mさんが訪ねてきたのは、そんなころだ。
私は「ぜひやりたいテーマがあるんですけど」と、だめでもともとの気持ちで『風と木の詩』のネームを見せた。


195ページ
「もちろん今のままでは無理です。面白そうですが、今のままの設定だとさすがに通りにくいと思います。でも次に描く作品が読者アンケートで、もし1位を取れば通りますよ」


199ページ
「そうじゃなくて、1位の取り方教えてよ! 作戦立てなきゃ」
「……」
本当に1位なんて取れると思っているの、という目で彼女(註:増山法恵)は黙ったままだ。
「ねえ! ノンたん!」


200ページ
食卓を囲みつつ彼女(註:増山法恵)が、「貴種流離譚が、いいよ」と低い声でぼそっと言う。
えっ、何? キシュリュウリタンって?
201ページ
「これ、どうかな。昔ちょっとだけ設定して出だしだけできてるんだけど」と、彼女(註:増山法恵)が出したのは、滅亡する王国から逃げようと地下に下りていく王子のイメージ。一瞬でそのシーンは私の頭の中に広がった。その先はまだできていないから創っていいよ、と言う


202ページ
エジプトとかはどうだろう? 読者が知っているようであまり知らない国だし、異国情緒の代名詞的なところがある。これがギリシャとかなら白人の世界観が強いが、エジプトは違う。エジプトにしよう。せっかく1位を取ると決めたのだから人気が出る要素ならいくらでも詰め込んでいくことにしよう。パターンだ、真似だ、類似だ、似たりよったりだ、何を言われようと構うものか。中学時代に読んだ北島洋子さんの少女マンガ『ナイルの王冠』(『週刊少女フレンド』)が好きだったことが、ちらっと頭をかすめた。
203ページ
タイトルも考えてあった。
『ファラオの墓』
われながら、悪くないと思った。



「扉はひらく いくたびも」中央公論(2021年)


97ページ
ところが、クロッキー帳を見た編集者は、こう言ったんですよ。「このまま始めると言われたら、担当者としては却下と言うしかないです。でも、これ、載せたいですか?」。今までとは違う反応です。
編集者は続けました。「次の連載が読者アンケートで1位になれば、このマンガも通りますよ。作品をヒットさせてくれた漫画家が、『次にこの作品を連載したい』と言えば、説得力がまったく違ってきます。読者が1位に推す作家の発言権は強い。そういうものなんですよ。組織って」。


98ページ
次の連載の戦略を練りました。それが4000年前の古代エジプトを舞台にした『ファラオの墓』です。戦いで滅ぼされたエステーリア国の王子サリオキスと、滅ぼしたウルジナ国の王スネフェルの愛憎ドラマです。