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【いまいかおる:モシ・モー氏】
テレビランド増刊イラストアルバム6 萩尾望都の世界


テレビランド増刊イラストアルバム6 萩尾望都の世界
出版社:徳間書店
発行日:1978年07月30日


資料提供
https://medaka.5ch.net/test/read.cgi/gcomic/163456...



モシ・モー氏
いまいかおる
(画像に続いてテキスト抽出あり)



モシ・モー氏
いまいかおる

まぶさい日射しがふんだんにさしこむ洋風の静かな居間。やわらかいレースのカーテンは、時おり囁きかける涼風に、はにかむようにすそを震わせ、それぞれの場所に収まったアンチックの家具類は、古き良き時代の夢を追って午後のまどろみを楽しんでいる。彼女 はごくあっさりした細身の部屋着をまとい、髪を無造作にたばね、皆の夢を気使うようにひそやかな、しかし、かろやかな身のこなしで花々に水をやっている。細いよくとおる声で懐かしい唄を口ずさみながら……。

というのが、私の想像した彼女像であった。なぜ、かくも現実離れした、乙女チック病患者のごとき想像をたくましゅうしたかというと、これすべて彼女の作品からうけるイメージの、あまりに強烈、あまりにリアルなるがゆえだったのだ…。

はじめてその作品に接したとき、「えらい人じゃー」と唸った。実に、生きている人々がそこにいた!!

彼ら・彼女らは、いつかの時代・どこかの国(あるいは星)に実際に生存していて、その人生の幾部分かを、萩尾さんの作品を通して私達に見せてくれたに違いない――そう信じたくなるほど、どの作品も迫真力にあふれていた。舞台となる国々の地理・風景はもとより、そこに住む人々の生活・思想・習慣にいたるまで実にしっかりした調査がなされており、特に外国を舞台とした作品には、今まで安直に使われていた「金髮と洋館がでてくれば、外国マンガ!!」という、少女漫画 の、悪い意味での慣習を、根底からくつが した感があった。そして、個々の登場人物に与えられた性格――彼らは、単に話を進めるための消耗品ではなく、りっぱに自分の世界を持った人々であった――さらに、冷たいほどつき放した人間観察。心理描写。それらを覆うやさしい叙情性……香気・ヒューマニズム・画力・迫力・構成力!! この人は人間じゃない!! そして、縁あって彼女自身と知りあい何年か経た今、ふたたび私は別の意味で叫びたい!! この人は人間じゃない!!

人の想像・希望など、どこ吹く風。実にユニークで赤裸々な、ナマの姿を見せてくれた。時には「ミーア」のミーアのような。時には「キャベツ畑」の愛すべきおばさんたちのような。また時には「スペース・ストーリー」のフロルのような……しかし、ただの一度も「ポーの一族」だの「11月のギムナジウム」だのといった、シリアスタッチの登場人物たちとイメージがかさなったためしはなかったのだ!! 往来のまん中で、ラインダンスよろしく足を上げる。冷蔵庫がないから、と、いたみそうな食物を片っ端から料理に放り込む (野菜炒めにイチゴ。ホットサンドに生ニンジンの輪切り。カレーにキュウリ)医者にビタミンC不足といわれてイチゴを山ほど買い込み、朝・昼・晩メニューはイチゴのみ、等々……。

彼女の日常がどんなものか。これはほんの一例だと申しあげれば、おわかりいただけることと思う。なお恐ろしいのは、彼女自身これらの言動に、なんの悪気も不思議も感じていなかったということだ。いつぞや、本人はいったい自分のこういった所業をどう思っているのかと聞いてみた事があるが、私のあげる数々の例を熱心に聞いたあげく一言、のたもうた。「まあ!! 私って、そんな人だったのね!!」
ああ、レースのカーテン、銀の食器……。

思うに、彼女は本当に宇宙のどこからかやってきた異星人ではないだろうか。それならワンテンポずれた彼女の生活感覚も、充分納得できる。

自然とネコとSFと、紅茶と漫画のすきな、モーさま。ネコとポットと原稿用紙を抱えて、ある日ふらりと地球に降りたち、そのままいついてしまったインベーダー。

地球はいいところでしょう。人間はおもしろいでしょう。どうか里心なぞ出さずに、いつまでもこの星にとどまって、すてきな作品を描き続けてください。あなたの正体は、だれにもバラしやしませんから。
最後に、モーさまのしゃべれる地球語リストを、参考までに……。
ひえーっ
きゃーっ
あれーっ
よいしょ!!
(漫画家)

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