5ちゃんねる【萩尾望都】大泉スレ【竹宮惠子】に関する資料まとめサイト

【ケーコタンのつれづれエッセイ】1979年07月(29歳)
竹宮:読者とのティーチ・インなとで「クラシック音楽を題材にした作品が多いが、専門に勉強したのですか?」と聞かれるが、これには赤面してしまう。

資料提供
https://medaka.5ch.net/test/read.cgi/gcomic/164218...


少年少女SFマンガ競作大全集PART2
出版社:東京三世社
発行日:1979年07月25日





少年少女SFマンガ競作大全集PART2本誌72-73ページ
ケーコタンのつれづれエッセイ「ペンの向くまま気の向くまま」
(図版に続いてテキスト抽出あり)




少年少女SFマンガ競作大全集PART2本誌72-73ページ
ケーコタンのつれづれエッセイ「ペンの向くまま気の向くまま」

クラシックはお好き?

読者とのティーチ・インなとで「クラシック音楽を題材にした作品が多いが、専門に勉強したのですか?」と聞かれるが、これには赤面してしまう。私は楽器は、なにひとつひけぬ聴く側に徹したミーハーファンなのだ。専門的な知識など全然持っていない。

漫画家は仕事の性質上、雑学家が多い。舞台がエジプトならエジプト関係の本を、クラシックならクラシック関係の書物を集中的に読みあさる。ゆえに書棚には多種多様の本が並び、みる人がみれば「なんのこっちゃ」という精神分烈症めいた内容になってしまうのだ。

幸か不幸か私は幼き頃より、ウィーン少年合唱団などに狂ったものだから、エンエンとクラシックの世界を愛し続けてきた。私のまわりには、ピアニストだのハーピストだの専門職の友人知人がいるので、チラホラとおもしろい裏話が入ってくる。有名音楽家の隠れたエピソード、留学生のうわさ話、それらはチョイとひねると結構おもしろい物語となる。

私に言わせれば、クラシックの世界はとてもエロティックだ。エロティシズムとは無縁ですよ、というような顔をしているが、その実、押し殺された形で情念が蠢いているような気がしてならない。例えば私はシューベルトの歌曲が大好きだが、軽やかな“若き水車小屋の乙女”はともかくとして“冬の旅”など、どんな人間からこんな旋律が出てくるんだろうとシューベルトの内部をのぞき込みたくなる。ブラームスが十九歳の時に作曲したという“スケルツォ”を聴くと、若きブラームスがどんな思いで五線紙にこのメロディーをたたきつけたか、さまざまに思いをめぐらせてしまう。

名バイオリニスト、ジノ・マランチェスカッティの演奏を耳にした時、一瞬にして『ロンド・カプリチオーソ』の物語が生まれたし『ガラスの迷路』はベートーベンの“テンペスト”を聴いて創った。

音楽の都ウィーンには何度も足を運んでいるのに、なぜか有名な「音楽家協同墓地」へは行っていない。墓地が街から離れた交通の不便な所にあることも行かない理由のひとつだが、どうもここに行ってしまうと、ウィーン訪問が最後になってしまうような気がするのだ。ウィーン市内なら新宿の街よりよく知っているつもりだが、一カ所くらい「まだ見ぬ聖地」を 残しておこう。

霊談義さまざま

霊能力のある知人に言わせると私にはオーギュスト・ボウのような守護霊がついてるんだそうな。 ただしオーギュと似ているのは顔形だけで、いたってやさしいと聞いて安心した。私のマネージャーには“やさしい女性の霊”がついていて、私の霊と仲が良いという。霊同志が仲良しだと、仕事の上でチームワークがガッチリ組めるんだそうで、ヘェと感心して聞き入った。

たまたま仕事場に、つかこうへい氏が遊びに来ていたので、もの霊透視に参加していただいたが、「オイ、このことどっかに書くなよ」と釘をさされているので、残念ながらつか氏の守護霊は公表できない。(もう少し時間がたったら発表していい?つかさん)。

私のマネージャーN嬢は感覚の鋭敏な人間で、一種のテレパスかナとも思う。テレパシーの発信体ではなくて、むしろ受信体で相手の心理を一遂にして読む。といっても、いつでも読心できるわけではない。本人の好むと好まざるにかかわらず、ある瞬間相手の心が言葉となって耳に飛び込んでくるんだそうで、あまり気持のいいものではないらしい。「今、XXXって考えていたでしょ?」と突然言いあてられれば誰でも仰天する。N嬢にしてみれば相手がホントにそう考えていたか確認したくてロに出してしまうんだそうな。

永井豪氏も『手天童子』を描いていた頃、鬼の霊につきまとわれたそうで「ほんとに怖かった!」 と真にせまった顔で言われると、こちらまで背筋に寒気がした。やはり感性をビンビンに張りつめて創作していると反世界の存在を可視できるようになるのかもしれない。

私自身はファンタジィすら苦手という現実派タイプの人間なので幽霊はおろか、UFOにもお目にかかったことがない。一度京王プラザホテルで光瀕竜氏と対談していた時はるかかなたに奇妙な光体を発見したが、光瀬氏が「いや、あれはUFOじゃありませんよ。絶対違います」とおっしゃるのでそんなものかなァと目を離した。では何なのかというと氏にも説明不可能であった。光瀬氏によるとUFOなどに遭遇する時は、それなりの雰所気というか、特殊な緊張感にも似た心理状態に陥るそうで、御自分の体験など話していただいた。

幽霊といえば、オバケの話は山岸涼子氏がものすごくうまい。うまいというのへんだが、彼女の口から幽霊談が語られると、ほんとに身体がふるえだすほど怖くなる。その力量のはどは氏の作品『ゆうれい談』を読んだ方には御理解いただけると思う。山岸氏から“たたり”という映画のストーリーを細かく説明してもらったことがある。その後TVでこの映画を見たら、山岸氏の“語り”のほうが本物よりずっとイマジネイション豊かで素晴らしかった。作家性のすごさであろう。

Menu

メニューサンプル1

管理人/副管理人のみ編集できます