5ちゃんねる【萩尾望都】大泉スレ【竹宮惠子】に関する資料まとめサイト

【時代の空気を映してきた、創造性あふれる歴史】

資料提供:https://medaka.5ch.net/test/read.cgi/gcomic/167011...



pen 2013年06月01日号 通算337号
発行所:阪急コミュニケーションズ
発売日:2013年05月15日




「pen 2013年06月01日号」72-77ページ
時代の空気を映してきた、創造性あふれる歴史。
(図版に続いてテキスト抽出あり)









時代の空気を映してきた、創造性あふれる歴史。

時代の空気を映してきた、
創造性あふれる歴史。
いまや日本が誇る文化となった少女マンガは、どのように生まれ、どのように花開いていったのか。
世相の移り変わりとの関連をふまえつつ、その歴史を年代順にひも解いてみよう。



男性作家が活躍していた、
初期の少女マンガ界。

少女マンガといえば、女性が描くもの。現在ではそれが当たり前の認識だが、昔は男性作家たちが大きな役割を担っていたと聞けば、驚く人も多いのではないだろうか。

その筆頭は、あの手塚治虫。戦後間もない頃から少年マンガで発揮していた才能に、少女雑誌がラブコール。1953年に発表した「リボンの騎士」は、華麗な絵と物語で夢の世界を紡ぎ上げ、少女マンガのエポックメイキングとなった。続いて、石森章太郎やちばてつやなど、後の少年マンガの大家たちが、こぞって少女マンガを開拓していく。 黎明期の当時は女性の描き手がほとんどおらず、駆け出しの男性マンガ家がどんどん駆り出されたのだ。「魔法使いサニー」(のちにサリー)や「ひみつのアッコちゃん」など、アニメ化でおなじみの作品も次々と生まれた。

それ以前の状況はというと、源流は戦前の少女雑誌に遡る。当時の女学生は、麗しい挿絵の付いた小説に魅了されていた。清い心で哀しい運命を生き抜く話が多かったのは、良妻賢母教育の時代ならではだろう。マンガといえば、雑誌の中でもわずかで、コメディタッチのコマ漫画ばかり。求められていたのは笑いのみで、読み物としての物語ではなかったのだ。

そこにキラ星のごとく登場した「リボンの騎士」の影響で、状況は一変。小説が担っていたストーリー性が持ち込まれたことで、少女マンガ界は大きく活性化する。貸本漫画がブームとなり、少女雑誌に占めるマンガの割合も小説と逆転していく。 そんな中、少女小説の挿絵を継承し、スタイル画の美しさを追求したのが高橋真琴。大きくきらめく瞳や西洋風のファッション、バレエなどの華やかなモチーフは少女たちを魅了し、その作風は以降の少女マンガに大きな影響を与えた。

テーマの傾向は、戦後の爪痕が残る頃は母子ものなど幸せ探しのメロドラマが多く、復興が進み西洋的価値観が浸透してくると、無国籍風の華やかなロマンが増えていく。東京オリンピックの後はスポ根ものも流行し、「アタックNo.1」が大ヒットした。

こうして、業界の活性化とともに、マンガ家を目指す少女たちも増え始める。 女の子の微妙な心理描写は、やはり女性作家のほうにリアリティがあった。その中心的存在として活躍したのが、わたなべまさこ、牧美也子、水野英子。なかでも、水野英子はロマンティックコメディや大人の男女の恋、ロシアの歴史ものなど、次々と新たな分野を切り開いていく革命児だった。とりわけ、ロックをテーマに60年代末のカウンターカルチャーを捉え、初めて少年を主人公とした「ファイヤー!」は衝撃的で、多くの男性ファンも呼び込んだ。

高度成長期の日本が豊かさを迎えてくると、少女たちの興味はおしゃれや恋に向かって加速する。西谷祥子の描く学園ラブコメは、思春期の恋や悩みをみずみずしく描いて一大ブームとなった。新人作家が大量に生まれ、マンガ専門の週刊誌が続々創刊される。戦後20年余りの間に、少女たちにとって、少女マンガはなくてはならない存在になったのだ。



タブーが次々打ち破られ、
少女マンガが芸術の域に。

1970年代は、少女マンガの可能性が一気に花開いた時代。個性豊かな 女性作家たちが立て続けにデビューし、マンガは女性の自己表現の手段として発展していく。新時代を切り開いた代表的存在といわれるのが、萩尾望都、竹宮惠子、大島弓子をはじめとする、昭和24年前後生まれの作家たち、通称“花の24年組”。彼女たちは、それまでの少女マンガにおけるタブーを軽やかに打ち破り、後世に残る傑作を生み出していった。

70年代に生まれた名作のひとつが、池田理代子の「ベルサイユのばら」。フ ランス革命期を舞台にした壮大な愛と激動のドラマは、歴史ものは流行らないという定説を覆して大ヒット。禁断だったベッドシーンも堂々と描かれた。なんといっても、革命の波に毅然と立ち向かう男装の麗人オスカルの魅力に、少女たちはしびれた。

そう、女性がパワフルになってきたこの時代のヒロイン像は、受動的で儚げなタイプから、運命を自分で切り開き自立するタイプへと変化しつつあった。 テニスを通じて成長していく「エ ースをねらえ!」、演劇界で女優を目指す「ガラスの仮面」など、自分の手で夢を掴もうとする主人公が、圧倒的な支持を得る。

一方、思春期の少女の不安定な心の内面を深く繊細に掘り下げたのが、「バナナブレッドのプディング」の大島弓子。モノローグを多用した緻密でポエティックな世界は、純文学に匹敵するとも称された。

文学的な完成度の高さといえば、萩尾望都を抜きには語れない。バンバイアの少年が永遠の時を生きる「ポーの一族」 は、さまざまな時間軸が交錯する緻密な構成や、詩的な台詞が圧巻の傑作。美少年が主人公というのも画期的だった。

さらに、少年同士の愛というタブーに挑んだのが、「風と木の詩」の竹宮惠子。この作品は一大センセーションを巻き起こしたが、少年愛の純粋さは熱狂的に迎えられた。作家にとっても、男女間のお決まりのパターンに縛られることなく創作できるため、少年愛は密かなブームとなる。いわゆるボーイズラブの原型だ。

萩尾望都と竹宮惠子は、少女マンガでは禁物だったSFの世界も開拓する。宇宙船の中のミステリー「11人いる!」、火星人の少女が主人公の「スター・レッド」など、海外のSF小説顔負けの創造力に、多くの男性読者もも引き込まれた。

こうした画期的な作品が脚光を浴びる反面、高尚でラディカルすぎると感じる読者も多かった。そんな層が支持したのは、王道のシンデレラストーリーや、平凡な少女が恋をする“乙女ちっくマンガ”と呼ばれる路線。当時のトレンドだったアイビールックに身を包み、可愛い小物に囲まれた少女たちが夢見る恋物語は、80年代にブレイクする学園ものへとつながる。

少女マンガの黄金期とも呼ばれ、多くの名作を輩出した70年代。あらゆる制限を取り払って題材の幅を広げ、緻密で繊細な心理描写に踏み込んだこの時代の作品は、その後に続くすべてのマンガの礎となった。



身近な友人のような、
等身大のヒロインたち。

あらゆるジャンルが可能になった少女マンガだが、1980年代に断トツ で人気を集めたのは学園もの。現実の世界でも身近なアイドルがもてはやされたように、マンガの世界でも親しみやすい等身大のヒロインが歓迎された。たとえば、松苗あけみの「純情クレイジーフルーツ」。4人の女子高生の恋と友情が、リアルな会話でテンボよく描かれ大人気となった。海外が舞台の場合も、設定はぐっと現実感を増し、「エイリアン通り」はロスのカレッジを、「BANANA FISH」はNYのストリートキッズ抗争を描き、アメリカの空気をリアルに伝えた。

いっぽう、萩尾望都をはじめ、70年代から活躍していた先鋭的な作家たちは、ますます個性を発揮し巨匠の域に入っていく。山岸涼子の「日出処の天子」は、聖徳太子がエスパーで同性愛者だったという驚きの設定で、マンガの果てしない可能性を提示した。

この頃は、少女マンガを読んで育った女性たちも大人になり、レディースコミックが新たに誕生。大人の恋愛や仕事、結婚などがテーマとなったが、次第に表現がポルノまがいに過激になり、間もなく閉塞してしまう。対して、サブカル誌でHシーンを多く描いていた女性作家たちは、少女マンガの枠にとらわれずに活躍。岡崎京子は、都会に生きる女性の欲望や喪失感を鋭く描き、時代の寵児となる。時はバブル期。89年には黎明期の原点を築いた手塚治虫が亡くなり、少女マンガの歴史はひ とつの区切りを迎えた。



ドラマ化も相次ぎ、
影響力の高いメディアに。

産声を上げてから数十年、少女マンガは少女だけが読むものではなくなっていた。 90年代に生まれたレディースコミックは下火を迎えていたが、新たにヤング・レディースコミックというジャンルが誕生。レディースコミックと従来の少女マンガ誌の中間読者層である、20代女性をターゲットとした雑誌が、相次いで創刊された。ここでは、読者層と重なる、仕事や恋愛に悩む若い女性の姿が自然に描かれ、支持を集める。料理の道と恋の間で葛藤するヒロインを描いた、槇村さとるの「おい しい関係」や、働く女子の恋愛マニュアルにもなった、安野モヨコの「ハッピー・マニア」などが代表格だ。

また、ファッション誌から派生した、おしゃれ系少女マンガ誌も生まれるなど、多様化するジャンルや年齢層に応じて、雑誌のターゲットは細分化されてゆく。 世の中のトレンドや価値観も、多様化の時代を迎えていた。

そんな中、メガヒットを飛ばし、ド ラマ化やアニメ化などでさらに人気を博す作品もしばしば出没。「花より男子」「NANA」「きみはペット」「のだめカンタービレ」「大奥」など、現代に至るまで枚挙に暇がない。少女マンガは、いまや重要なメディアとしての地位を確立していった。

現在、キャリアを積んだ女性作家は、青年誌にも進出している。少女マンガという概念も曖昧になりつつあるが、読者に夢と想像力を与えるという原点がある限り、可能性をさらに広げて発展していくだろう。



pen 2013年06月01日号 通算337号

Menu

メニューサンプル1

管理人/副管理人のみ編集できます