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【竹内緑郎:レコードプロデューサー】1979年07月

資料提供:https://medaka.5ch.net/test/read.cgi/gcomic/164218...



少年少女SFマンガ競作大全集PART2
出版社:東京三世社
発行日:1979年07月25日




「少年少女SFマンガ競作大全集PART2」78-79ページ
音楽にも少女漫画があっていいじゃないか
レコードプロデューサー
竹内緑郎




音楽にも少女漫画があっていいじゃないか
レコードプロデューサー
竹内緑郎

なぜ、少女漫画家のレコードを作ったりするんですか?

少女漫画ファンの男の子からそんな電話をもらったのは昨年の8月末だった。竹宮恵子の初LP“ガラスの迷路”を発表して一ヶ月後のことで、ぼくにとっても少女漫画家のレコードをプロデュースしたのは初めてだし、それが発売一ヶ月で2万枚を売り、ヒットチャートも60位 に顔を出し、地方の営業所やレコード店からも吉報ずくめ、発売記念のイベントやコンサートに駈けまわりながらホッと一息入れたところへ、あんまり好意的には感じられないその電話に「作りたいから作るんだ」と答えてほっといてしまった。(乱暴な返答でごめん) ところが だ、今年の3月、萩尾望都の初LP“Hエトランゼ”(萩尾望都作詞・作曲・歌の完全オリジナルで、発売一週目でオリコンのヒットチャート5位にランクされた)を発表すると、また昨夏の電話に似たような疑問がぼくの耳にとどいた。こんどは少女漫画マニアの女の子たちらしくて、「なぜ、萩尾望都が作曲したり歌なんか歌ったりするのか?」という疑問らしい。やっぱり好意的には感じられなかったが、ぼくに直接ではなかったので答える機会がなかった。そして今、竹宮恵子の企画、選曲、構成で、ボーイソプラノの魅力を集めたLP(今秋発売予定)を制作中である。プロデュースをしているぼくとしては「なぜ、少女漫画家のレコードを作るのか?」という質問に、制作者として真面目に答えにゃならん、と思う。
「なぜだろう?」問いかえすまでもない。少女漫画家に魅力があるからだ。

「どんな魅力?」 TV、映画、舞台の連中が少女漫画家に注目しているようにぼくらレコード制作畑の者にも少女漫画家の存在がとても気になっていたんだ。そこで少女漫画を読んでみた。竹宮恵子、萩尾望都、大島弓子、木原敏江、一条ゆかり、少女K誌のY編集長にアドバイスを受けながら必死で読んだ。
少女が読むから少女漫画なんだろうけど、ぼくらが読むと何ていうんだろう? とにかく大の男が、それはもう簡単に、不可思議な糸で引き込まれてしまったのだった。

「レコードにもこんな世界が欲しいな」と、単純に思い込んだのが始まりで、漫画家に直接会って話してみると、ますます魅力を感じてレコードを作りたくなった。だからと言って勝手に作れる訳じゃない。漫画家の方でレコード制作に魅力を感じてくれなかったら絶対ダメだ。漫画の原稿依頼じゃなく、全く別世界の制作をやりましょうというのだから、頭を下げてお願いしますっていう問題じゃない。漫画家が本心からチャレンジしてくれなくてはぼくの方でスタッフを組めない。一枚のLPを作るのに、ミキサーもアレンジャーも、そしてディレクターもミュージシャンも、これはオレの仕事だと思いを込める。もちろんぼくだって例外じゃない。漫画家が漫画を描く片手間には作れませんのだ。

「いいでしょう、やってみましょう!」 と、竹宮恵子先生が燃える瞳を向けてくれたとき、初めての少女漫画家のレコード制作が、始まったのだ。(嬉しかったですね。あの時は)

彼女のファンならとっくの昔に知ってますよというだろうが、少女漫画家で、その全作品に必ずテーマ音楽を入れて描く作家は彼女しかいない。いや、少女漫画だけでなく漫画界全体をみても、そんなオソロシイひとはいないだろう。名作『ガラスの迷路』のテーマ曲はベートーベンのピアノソナタ『テンペスト』 だっただなんて。それだけでもう「なぜ少女漫画家がレコードを作るのか?」などとたわけた質問は吹っとんでしまっておくれ。ちょっと少女漫画をかじった程度ではずかしいけど言わせてもらえば、あの『空が好き!』音楽が流れているなんてものじゃない、あふれている。漫画ゆえに?音の出ない悲しさに登場人物たちはもどかしさを感じているのではないかとさえ思えてくる。天才少年歌手ロベルティーノのカリシモピノキオ(なんと漫画のなかの詞は竹宮恵子自身の訳なのだ)が聞こえてこないのが本当に悲しいね。映画だったら当然サウンドトラックがある。だったら少女漫画にも音楽があっていいじゃないか。LP『ガラスの送路』はそこから出発した。少女漫画家竹宮恵子が、少女漫画誌上では表現出来ない音の世界をレコードに託して創りあげた“少女漫画の世界”は、初めてのLP
で成功した。そして萩尾望都が、少女漫画家の枠を飛び出して歌まで歌った『エトランセ」もみごとに成功した。がその成功に満足している訳ではない。竹宮恵子はすでに次のLP制作に動き出しているのだ。ぼくとしては、今秋に発表する竹宮恵子の新LPでは「なぜ、少女漫画家がレコードを作るのか?」という少女漫画ファンの疑問をもらわないようにしたいと思っている。

「それでも疑問がきたら?」
頑張ってまた作る。少女漫画家のレコード制作は始まったばかりなんだから。



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