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【11人いる!アニメ化・メッセージ賛歌】



11人いる!(映画アニメグラフィティ)
出版社:小学館(プチフラワー編集部)
発行日:1986年12月01日




11人いる!(映画アニメグラフィティ)」136-139ページ
11人いる!アニメ化・メッセージ賛歌
複数の図版を組み合わせて見開きにしてあります
(図版に続いてテキスト抽出あり)





『11人いる!』のアニメ化によせて
SF・まんが界のオーソリティ、11人からの
メッセージ賛歌(五十音順)

公開間近のアニメ『11人いる!』によせて、現在活躍中の先生方から届けられたメッセージ。そこには期待と不安が渦を巻いていた。



新井素子さん
“ヴェネ星”の名前を無断拝借

●プロフィール●
昭和35年8月8日、東京に生まれる。立教大学文学部卒業。
都立井草高校2年在学中に『あたしの中の……』が、「第一回奇想天外新人賞」に佳作入選し、注目される。その後、学生作家として活躍、大学卒業後は作家活動に専念、現在に至る。
主な作品として、『いつか猫になる日』『通りすがりのレイディ』『カレンダー・ガール』などがある。星雲賞を受賞した『扉を開けて』は、アニメ化されて、『11人いる!』と同時上映される。

『11人いる!』を最初に読んだのは、私がまだ中学生だった時だと思う。そのちょっと前、萩尾さんの『ポーの一族』に感動して少女まんがを読むようになった私、『きゃあ、今度はもろにSF』っつって喜んで、 むさぼるようにして読んだものだった。

私の記憶違いでなければ、確かこの話、前後編っていう形で雑誌に掲載された。発表されてから後編がでるまでの間、友達五人で、十一人目は誰なのか、その動機はって、推理ごっこして遊べて……。あっちこっちにちりばめられた、その当時の少女まんがでは珍しかったSF的なディティールと一緒に、ミステリーみたいな楽しみ方もできて.……私は、このお話、大好きなのである。

なお、私は作中にでてくるヴェネって星の名前が好きで、実は、私のデビュー作にでてくる宇宙人は、ヴェネ星人だったりするのだ。



川又千秋さん
名前を紹介しただけで感謝された

●プロフィール●
北海道小楢市出身。慶応大学文学部卒業。
ねん ちょうへん かいじん いざやくしゅう
長編『神の逆襲』でデビュー。同年『幼詩狩り』でSF大賞受賞。昭和55年』夢の言葉・言葉の夢』で評論集を脱稿。昭和56年『火星人先史』で星雲賞を受賞。
現在、SF、ファンタジー、冒険アクション等、幅広く活躍中。

一九七三年から七四年にかけて──僕は、SFマガジンに『夢の言葉・言葉の夢』と題する評論を連載していた。その文庫版の索引を繰ってみたら、萩尾望都の名前が三つのパートに登場していた。最初は、七四年の九月で、これは『ポーの一族』が単行本にまとまったことに対する言及。また、翌月は、彼女の名を引きつつ、「(少女マンガが)今一番アナーキーな部分に見えてくる」とある。さらに年末の最終回で、僕は、若干の萩尾望都論をまじえつつ稿を閉じたものだ。
そして、この連載が終了して後──僕は、読者から、似たような内容の手紙を、およそ十通近く相次いで受け取った。似たような内容というのは、つまり、それらが、感謝の手紙であった点だ。「萩尾望都という作者を教えてくれて、ありがとう」──彼等は、僕に、そう感謝していた。まだ、尾望都の名前が、SF界全体には広まっていなかった時期の話である。その名前を紹 介しただけで感謝されるマンガ家──それが、望都サマなのである。



栗本薫さん
不滅のカップル、タダとフロル!!

●プロフィール●
昭和28年、東京生まれ。早稲田大学文学部卒業。
中島梓名で昭和52年に評論『文学の輪郭』で「群像新人賞」を受賞。昭和53年、『ぼくらの時代』で江戸川乱歩賞を、最年少受賞で華々しくデビューした。その後、次々と推理、SF小説、評論を発表し、多彩な分野で活躍している。
主な著書として、『魔界水滸伝』『真夜中の天使』『翼あるもの』『ぼくらの気持』『絃の聖域』『キャバレー』など多数ある。『キャバレー』は映画化され、今年の話題を呼んだ。

はじめて萩尾望都さんの『11人いる!』を読んだときのショックというのは、いまでも忘れられません。

この作品そのものがとても美しく、すてきでリリカルだったというだけでなく、この作品はまことに記念すべき、エポック・メイキングな作品──日本の少女マンガ史上はじめて、本当の本格SFが誕生した瞬間! であったからです。

『スター・レッド』も『A─A’』も、むろん他の人々の作品も、『11人いる!』 がなかったら、生まれなかったかもしれないのです。

そして、それはまたタダとフロル、という不滅のカップル(?)を生み出した、記念すべき作品でもありました。
天才・萩尾望都に相手!



小松左京さん
私と少女まんがとの出会い、それは……

●プロフィール●
昭和6年大阪に生まれる。京都大学イタリア文学科卒業。
代表作に『地には平和を』『日本アパッチ族』『復活の日』『果しなき流れの果に』『継ぐのは誰か?』『日本沈没』『エスパイ』などがある。『首都消失』で、60年度のSF大賞を受賞し、映画化も決定している。今までにも、多くの作品が映画化され、日本のSF界の大御所として、現在も精力的に活躍している。

私は萩尾さんと対談しているので、ダブってしまうと思うが、まあがまんしてください。

私が少女まんがを読むようになったのは、萩尾さんがきっかけだった。それまでは少女まんがと聞くだけで逃げていたんだけど、萩尾さんが少女まんがはデザイン画の大きな流れがあるって、教えてくれたんで、認識を改めて読むようになった。

それで、私が小学館漫画賞の選考委員になった時、女性の受賞者が極めてすくなかったので、『ポーの一族』と『11人いる!』を半ば強引に推した。それだけの価値も実力もあると当然思っていたしね……。

今度アニメ化されるのは、非常にうれしい。 ぜひとも成功してほしいね。



辻真先さん
10年前に映像化を考えたのだが……

●プロフィール●
昭和7年、名古屋に生まれる。名古屋大学卒業。昭和29年NHKプロデューサーとなり、『バス通り裏』『お笑い三人組』などの制作演出をする。昭和37年フリーとなり、アニメ脚本・劇画原作・ミステリーなど多彩な才能を発揮する。
昭和57年『アリスの国の殺人』で第35回日本推理作家協会賞を受賞。以後、ユーモア、トラベルなど幅広いミステリーの作品を発表し続けている。

残念なことに、萩尾さんと仕事をご一緒したことがない。「少女コミック」誌に覆面の原作をつづけていた関係で、彼女の作品はせっせと読ませていただいたけれど──そして、おもしろいと思うと条件反射のように、テレビにしたいアニメにしたいという欲が、ムラムラと湧いてくるぼくだったが──一連の中短編の完成度の高さにK・Oされて、ついに映像化の勇気が出なかった。それだけに、『11人いる!』がNHKでテレビドラマになると聞いて、悔しかった(シャクにさわって見なかった)。

ところで今度は『11人いる!』が、劇場長編アニメになるという。ベテランの(?)ぼくでさえビビッた、萩尾世界をスクリーンに構築するのは、容易なことではない。原作のひと筋縄でゆかないシカケ(SFの視点から見ても、マンガの角度から見ても)が、動きと音を伴うことが、どうふくらませられるか……一分の危惧をふくみつつ、大きく期待してしまうのです。



手塚治虫さん
アニメ化は時遅しか……?

●プロフィール●
大正15年、兵庫県に生まれる。大阪大学医学部卒業。
『鉄腕アトム』他数多くの作品があり、息の長い作家活動をし、プロ・アマを問わず、まんがの神様として師事されている。最近作
『アドルフに告ぐ』は静かなブームを呼ぶ。

『11人いる!』は、萩尾さんのSFの出世作です。それまでの萩尾作品は、『ケーキケーキケーキ』などをのぞいて、マニアの中でのカリスマ的存在でした。SF作家、SFまんが家、萩尾望都を喧伝したのが、この作品で、ブラッドベリの影響を受けていることを再確認させてくれた名作でした。

それまでのSFまんが家の発想は、アメリカのジュヴナイル、スペースオペラのSFのエピゴーネンが多かった中で、『11人いる!』は、まことにユニークな作品で、こ ういうストーリーテリィングがあったのかと舌をまいたものです。

ぼくはどちらかというと萩尾作品は短編が好きですが、この作品はアレンジしだいで、どんな長編にもなるし、スターシステムの映画にもしやすい作品だと思います。

その点アニメになったのは、時遅き感があって、動きの多いことをメリハリにしているアニメの手法で、このドラマがどういう風に処理され、アニメとしての特質を生かしているか、少し心配です。

萩尾さんのくんでもつきぬ創造力に期待すると同時に、萩尾さんの名作が、どんどん映像化されることを願ってやみません。



野田秀樹さん
素晴しい構成力、設定に脱帽!!

●プロフィール●
昭和30年長崎県に生まれる。東京大学法学部中退。
昭和51年、20歳の時「夢の遊眠社」を結成し、「走れメロス」を初演。その後、『二万七千光年の旅』『怪盗乱魔』『ゼンダ城の虜』 『野獣降臨』などと次々と書きおろし上演し、人気沸騰、時の人となる。 昭和58年「岸田戯曲賞」 を受賞。シナリオ、エッセイ集も発表。

今回、改めて読みなおしてみて、つくづく萩尾尾望都さんの作品は、この『11人いる!』に限らず、男性だなあと思いましたね。これは、まったく女性蔑視の意味は微塵もなく、純粋に敬服しているのです。

彼女の場合、構成力がすごい。女性なのに(またしても)よくこれまでと、感服してしまう。

また、『11人いる!』に限っていうと、登場するキャラクターが11人が11人とも個性的で面白い。ドラマを盛り上げるうえで、このキャラクター設定は成功していると思う。また、フロルという美人(?)の両性体を登場させたことが、作品をより魅力的にしていると思う。面白い設定だし、やはり女性(?)がいるのはいいことです(あくまでも、作品の中でのことです)。

設定の中で、リミットを作っているのがまた面白いですね。11人という人数、53日という日数、このリミットの中でドラマを作るのは、舞台と共通性があり、楽しい。でも、萩尾さんの作品の舞台化はすごく難かしいだろうな……。



松本零士さん
アマゾンでの萩尾さんの思い出

●プロフィール●
昭和13年福岡県に生まれる。昭和28年、15歳で『蜜蜂の冒険』で漫画少年第一回新人王長編漫画の部に選ばれる。昭和33年、上京し、本格的に漫画に専念し、主に少女まんがを描いた。昭和45年頃より少年まんがが主になる。昭和47年『男おいどん』で講談社漫画賞受賞。昭和54年、アニメ『銀河鉄道999』が封切られ、大ヒットする。

アマゾンのジャングル踏破行で、萩尾望都さんのベルトに結び付けられた丸い取線香の容器が、彼女の歩調に合わせて揺れていたのをよく覚えている。リオデジャネイロのシュガーなんとかいう山のてっぺん で、星を見ながら酔っ払った時の事もよく覚えている。そうだ、酔っ払ったのはちばてつや氏と私で、萩尾さんがどうしていたかはさっぱり記憶にない。そのとき同行者が11人いたかどうかそれもよく思い出せない。地球の裏側での楽しかった思い出である。快男児ちば氏はコパカバーナの海岸をジョギングしていた。私は海岸沿いの路上でかっぱらいと化かし合いをしていた。萩尾さんはホテルで仕事をしていた、これはよく覚えている。

旅をし、発散し、吸収し、そして素晴しい創作へのエネルギーへと転化させてゆく、萩尾さんの情熱には限界というものが無いように見える。萩尾さんの内側から、時と共に生まれたその世界を、このアニメーションは心行くまで楽しませてくれるにちがいない。



美内すずえさん
不安と期待で、 パニック寸前!!

●プロフィール●
昭和26年、大阪に生まれる。高校2年生の時、「別冊マーガレット」に『山の月と子だぬきと』を投稿、金賞受賞し、デビューする。
代表作に『13月の悲劇』『赤い女神』『はるかなる風と光』など多数ある。昭和51年より「花とゆめ」に連載を開始した『ガラスの仮面』は大長編となり、その人気は衰えを知らない。

まず初めに、アニメ化おめでとうございます。

本当は、不安と期待でドキドキのしっぱなしなのです。萩尾さんのあの作品の独特な雰囲気が、はたしてうまく映像化できるのか、とても心配です。 萩尾作品の美しいセット、一瞬のポーズ、そして空間の神秘性が、連続する動きの中でうまく表現できるのでしょうか?

私は萩尾さんの作品が大好きで、数年前某テレビ局で、やはり『11人いる!』をドラマにしたのを期待して見たのですが、ガッカリを通りこして、腹立たしく、途中で切ってしまった。むしろ、私は萩尾作品の映像化は反対、イメージを壊されるのがこわいんですね。でも、ここまで来たら、ぜひ成功してほしいと思います。

成功したら、萩尾さんに紫のバラと、萩尾さんの好きなワインを贈り、祝杯をあげたいと思っています。



光瀬龍さん
現在の萎縮したSF界の刺激剤に!!

●プロフィール●
昭和3年生まれ。東京教育大学理学部卒業後、哲学科に学ぶ。長く高 校教師を勤めるかたわら、数多くの、SF、時代小説を発表した。現在は執筆に専念している。
主な著書として、『たそがれに還る』『百億の昼と千億の夜』『暁はただ銀色』などがある。
『百億の昼と千億の夜』は大きな反響を呼び、萩尾望都氏によりマンガ化されている。

小説の方でもコミックの方でも、相も変わらずもオカルト・ミステリーやサイボーグのヒーロー・ストーリーが氾濫している。

ま、それはそれでいいようなものの、SF作家としては、それらがたいへん気になるし、「いいかげんにせいよ!」 のひとことも言いたくなるのだ。それは体裁はSFでも、それがSFならもっとも大切な《SFマインド》を持ち合わせていない、あるいは見失ってしまっているがゆえだ。

萩尾さんの持っているセンス・オブ・ワンダー、すなわち《SFマインド》は、おそらく生まれつきのものかもしれない。それが最高に花咲いたのが、この『11人いる!』だろうと思う。

日常の中にある非日常的な視点こそ、この作品を生み出したパワーであり、対象としての不条理を自らの中にかかえこむことのできる、精神の豊かさなのであろう。

よい時に映画化されたものだ。萎縮した《SFマインド》に強力なカンフル注射になることだろう。



山岸涼子さん
驚異の集中力、ただ者ではありません

●プロフィール●
北海道に生まれる。昭和44年 『レフトアンドライト』でデビュー。
昭和46年に発表した『アラベスク』で一躍注目される。『メタモルフォシス伝』『妖精王』などの独特の世界を構築した。
昭和55年から連載開始された『日出処の天子』は、講談社漫画賞を受賞するなど、多くの人に高い評価を得ている。

私と彼女のつき合いは長い。その彼女を見ていて驚かされるのは、その才能はもちろんの事、集中力のすごさである。彼女は話しの最中に突如、自分の世界へトリップしてしまう。初めの頃は何が何だかわからないから、必死に話しかけて、こちらの世界へ戻ってきてもらうが、しばらくすると彼女はまた自分の世界へ埋没してしまう。これはすごい! 物を作る人間に、このトリップなくして何ができよう。私達凡人のマンガ家が苦労するのは、この自分の世界の入口へいかにして到達するかである。やっとその入口へたどり着いても、たわいの ない誘惑で、それはすぐ白紙に戻ってしまう。彼女を見て、つくづく才能とは、集中力に現われていると思い知らされる。修業僧が荒行・苦行してやっと入り込む悟り(夢三味)の境地に、いかにして入り込むかで、その作品の価値が決定する。となれば、その世界へフッと入り込む彼女は、ただ者ではない。ほとんど超人! である。

その彼女が描いた『11人いる!』がアニメ化、しかも彼女も本腰入れて制作に参加していると聞けば、これは期待せずにはおれない。私は、ひたすら公開の日を待ち望む、萩尾ファンの一人である。


(五十音順)



11人いる!(映画アニメグラフィティ)1986年

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